『シンゴの旅ゆけば〜!(3)ボリビアの仙人』

なんだかんだで、もう25年くらい整体の仕事をしているので、まぁ、そりゃだいたいのことはできているつもりになっていると、うぇぇぇぇぇ、まさかそんなことがぁってことに気づくんです。人の身体って、すげぇと思います。

だからまぁ、この仕事が本当に面白いと思うのは、今まで信じていたことが、ガラガラと崩れちゃうようなことが毎日起こることです。

整体師としての才能があるかって訊かれたら、それはまぁ分からないとしか答えようがないんですけど、たぶん、なんでも真に受けちゃう才能だけはあるかもしれない。

ガキのころに柔道をしていたんです。大先生って呼ばれてた、当時70歳は過ぎていたと思うんですけど、すげぇ先生がいたんです。めったに道場には来ないのだけど、来ると相手をしてくれる。その先生の得意技が「空気投げ」。マンガなんかに出てくる、何もしてないのに、相手が勝手に吹き飛ぶ(ように見える)技のことです。これがね、現実にあるんですよ。

普段はヨボヨボしているように見えていても、舐めちゃいけない。それでまぁ、あれをできるようになりたいって、訳のわからない特訓とかしてましたけど、整体も同じかもしれないです。

ペルーからボリビアの国境を越えてすぐのところに、チチカカ湖ってのがあっって、チリ人のシャーマンのおばちゃん2人と、オランダの兄ちゃんと俺っていう、なんでそうなったんだグループで、その湖に行ったんです。セドナに住んでる友達から、ペルーにいるんだったら、ちょっとボリビア行ってこいよって言われて、彼の友達の仙人に会いに行ったんです。

白いロン毛に、白いヒゲ。とことこ歩いてくるじいさんを見て、マジで仙人だなって思ったんですけど、いきなり、兄ちゃんタバコ持ってないかと言う。

あ、これでよかったらってあげたんですけど、ふ〜ん、おまえ、交通事故にあっただろってボソッと言うんですね。

俺は7歳の時に意識不明で死にかかるような交通事故にあっているので、そうなんですよねぇって答えたら、じゃ、整体してやるよと言う。

その日の夜に、仙人の家でしてもらったんですけど、これがね、口がポカーンと開いたまま閉じないくらい驚きました。木の椅子に座れって言われて、そこに座ったら、仙人が軽く突いてくる。その前にかなりワインを一緒に飲んだから、酔ってるんだと思うんだけど、なんかフラフラしているわけです。あっちを突いたり、こっちを押したり、大丈夫かこの人はって状態なんです。

あ、じゃあ立ってと言われて、今度は背中の方を突いてくる。そうそう、確か一番最初に頭を思いっきり後ろに突かれて、倒れそうになったんだった。

なんだよ「北斗の拳」のケンシロウかよって考えていたら、はい、終わり。背骨のズレが一か所戻らないから、そりゃまぁ仕方ないなぁと言う。たぶん10分くらいかな。何なんだって思いながら動いたら、もうウソでしょってくらい身体が軽い。このままパタゴニアまで走れるくらい軽いし、毎日リュック背負って歩いていたから、肩とか腰とか痛かったのが、どこも痛くない。

なんで?

そりゃまぁ、そう思いますよね。何が起こったんだって思います。

また真に受けちゃって、仙人のやり方を見よう見まねでやってみるんだけど、まだ彼のようにはできない。そりゃそうです。

だから、今の目標は仙人なんですよね。

あ、才能っていやぁ、そういうマジかよっていう人たちに出会う才能はあるかもしれないです。

タイで整体教わったワンディもそうだし、ああ、兄ちゃん、あんた何もわかっちゃいねぇなって教えてくれる人が、必ず出てくる。

ありがたいなぁって、それは本当に思います。