『ジェーン・バーキンという謎②』

私も大好きな映画なのですけど、『冬の旅』に感激したジェーン・バーキンが、アニエス・ヴァルダに手紙を書いたところから、二人の親交は始まったそうです。その結果生まれたのが2本の映画なのですけど『カンフー・マスター!』の相手役はヴァルダの実の息子だし、シャルロット・ゲンズブールも、ルー・ドワイヨンも娘役で出てきますから、もうほとんどプライベートなフィルムなのですね。

40歳になったジェーン・バーキンが10代の少年に恋をする話。企画を書いたのは、そもそもジェーンだそうですけど、彼女ってスキャンダラスなことをするというか、巻き込まれがちなのですね。

アントニオーニの『欲望』に出演してヘアヌードが物議を醸したことで有名になった訳ですし、ゲンズブールと交際が始まった時は、彼はブリジット・バルドーと不倫をしていた訳です。マスコミから騒がれるようなことも多かったと思いますし、長女のケイト・バリーが不審死を遂げてしまうとか、事件が多い人生だったと思います。

それなりに承認欲求があったことを映画を見ていたら感じるのですけどね。
認めて欲しいようには認めてもらえない。だけど、自身の思惑とは別の形で認められてしまう。そういう人生だったように思うのですね。つまり、いつも的外れな形で「いいね!」されてしまう人生という感じです。

「普通の」人たちというのは、「相手が自分のことをどう考えているか」が、「自分がどうしたいのか」よりも優先される人のこと。

兼本浩祐は『普通という異常』にそう書いていますけど、ジェーン・バーキンは「相手が自分のことをどう考えているか」についてちゃんと考えているし、「自分がどうしたいのか」を結果として抑え込むことも多かったと思うのですけど、自由に振る舞っているように見えてしまう。

そして彼女の考える「相手が自分のことをどう考えているか」から常にズレてしまうけれど、違う形で承認されてしまう。そういう運としか言いようのない何かを持っている人だったのだと思ったのですね。

本人の思惑とは違う方向に進むのですから、端的に言って失敗なのですけど、それが不思議と結果的にうまくいってしまう。望んだものの一部は手に入ってしまう。

ジェーン・バーキンというジャンルを生きるためには、きっとその才能が必須だったのだと思う
のです。