『6パーセントという条件』

『Grit やり抜く力』の著者アンジェラ・ダックワースは、本の中でこう言っています。

人生の究極の目的とは、結局のところ…自分以外の誰かの役に立つこと以外にない。それは自分が成功するための唯一の方法だからだ。あなたがしたいこと。その内容が人生の究極の目的と一致していれば…あなたは成功することができるだろう。

それはまぁ、確かにそうでしょうけど…誰かの役に立とうと頑張りすぎた結果、心を病んでしまう方が多いのも事実です。

「人の為と書いて「偽り」(いつわり)と読むんだねぇ。」というのは、相田みつをさんの言葉ですけど、それでも、エゴを満たすためのお節介の方がまだいいかもしれない。病気になるよりはマシだと思います。

精神科医に多いのですけど、燃え尽き症候群(バーンアウト)というのもありますからね。

ハーバード大学のMBA(経営学修士)の最初の授業で言われることがあります。

アメリカの富裕層と呼ばれている人たち、社会的に成功している人たちで、年収の6パーセント以上の金額を、どこかに寄付していない人は統計上存在しない。

だから、もしあなたが寄付なんてとんでもない、自分の稼いだお金は全部自分で使うと思っているのなら、ここから出て行ったほうがいい。

これを聞いた私の知人は、こう思ったのだそうです。

なんだ、お金持ちになるって簡単なことじゃないか。6パーセント寄付するだけでいいなんて。じゃあ、どこかに寄付して、お金持ちになるのを待とう。

彼が成功するかどうかと言ったら、それは分からないですけどね。メンタルの病気にはならないような…。

あるところにお金持ちがいました。

そのお金持ちは、大のきれい好きだったのですけど、自分のことしか考えていない男でした。

お金持ちは、自分の家の中や、持ち物を召使いにピカピカに磨き上げさせました。

庭師に、毎日庭の手入れをさせ、運転手には車を磨かせました。

ある日、お金持ちが屋敷に戻ってきたところ、屋敷まで続く道路が汚れているのが気になりました。

わしの住んでいる周りが、こんなに汚いなんて耐えられない。

そう言ってお金持ちは、屋敷の周辺を掃除し始めました。もちろん、彼は自分のことしか考えていません。

屋敷の周辺がきれいになると、さらにその先に広がる町が薄汚れて見えることが、お金持ちの気に障りました。

こんな汚い町に住んでいるのなんて、耐えられない。

お金持ちは町を掃除し始めました。もちろん、自分だけのためにです。

町の人たちは、お金持ちに感謝しました。この町がこんなにきれいになったのは、あの人のおかげだと、あちこちで会話の話題になりました。

お金持ちは、自分のことしか考えていなかったのに、図らずも人の役に立ってしまったのです。

誰かの役に立つこともいいけれど、まずは自分の役に立つことをしてみてください。

案外、回り回って、誰かの役に立つことになるかもしれませんから。