1泊17ドルだ。チョビ髭はそう言った。話をしている間もくるくると器用にドラムのスティックを回している。
なんと朝食も付く。その上な…。男はそこで間をおいた。なんだ、なんだ、どんなサービスがあるのだ?
ポップ・コーンが食べ放題だ。
チョビ髭野郎はポップ・コーンをポピコンと発音した。それでまぁ、ずっと俺と弟にはポピコンと呼ばれることになったのだけどね。
とんでもない場末の安宿を想像していたのだけど、ポピコンが案内してくれたホテル(サンセット大通りのすぐそばだった)は意外にもキレイで、6人の相部屋なのだけど…俺と弟の部屋には俺たち以外に客はいないようだった。
本当にポップ・コーンは食べ放題で、滞在中はフロントの巨大なソファに座って、テレビを見ながらポップ・コーンばかり食べていた。
ポピコンもだいたいフロントにいて、同じソファでゴロゴロしていた。この男は、結局最後までほとんど上半身裸のままだったのよね。
このホテルには日本人がもう1人いるぞとポピコンに言われた。見かけたら紹介してやるよ。あいつは英語がうまい。おまえらは、何を言っているのかよく分からないからな。
それでまぁ、シンゴ!とポピコンに呼ばれてフロントに行くと…ロン毛でボーリングシャツを着た日本人がいて、丁寧に挨拶をされた。
彼はマシモ君といって、古着の買い付けでアメリカに来ているそうだった。90年代って古着ブームだったのよ。だいたい同じくらいの歳だったので、マシモ君とは話もあった。じゃあ、明日スリフト・ショップ巡りをするので、手伝ってくれたら夕食おごりますよという話になって、暇だったので着いていくことにしたのよ。彼はレンタカーで移動していたので、ロング・ビーチとか、あちこち連れて行ってもらえたし、本来ならこっちが夕食をおごらなきゃいけないのよね。
じゃあ、8時に朝食食べて、それから行こうという話に決まったのだけど…この朝食で恐ろしいものを見ることになったのよ。