『シンゴの旅ゆけば~!(126)フランス・1998年夏⑤』

なぜ、そうなるのか全く分からないのだけど、フランスが外国に勝つと、凱旋門に向かうということになっているのかもしれない。市庁舎広場にいたアホな若者大勢と、途中でどこからか加わってきた若者で凱旋門に向かうRivoli通りはごった返していたのだけど、とにかく面白そうなので人の波に流されるようにして、俺たちも歩いていった。

これはヤバいと思ったのは、通りに停まっていた車を次々にひっくり返しはじめた時なのだけど、そういや、その後もパリで車がひっくり返っているとか、燃えているとかってのをよく見たから…そんなに珍しいことじゃないのだと思う。

うかうか駐車もできねぇなとは思ったけどね。

Rivoli通りから、コンコルド広場に向かうあたりには、高級ブティックが立ち並ぶSaint-Honoré通りもあるし、これはヤバいかもって思っていたら、案の定店のガラスを叩き割るとか、略奪の一歩手前まで若者連中は暴れ始めていた。

どうもね、これも後から聞いた話なのだけど、パリ市内ではなく環状線の外側に暮らしている移民の若い連中は失業しているとか、まぁいろいろと怒りが溜まっていて、何かあると爆発するということがパリでは繰り返されているらしい。

メトロ4番線の終点あたり(18区っていう、治安の悪いところね)に長くいた時に感じたような、ああ、怒っている雰囲気よねぇってエネルギーが、この時もあったのよ。

まぁでもね、歩きながらも、酒やら大麻やらは回ってきて、もしかすると酒は略奪したものかもしれないのだけど、とりあえず全員で回し飲みしながら歩いていった。はぐれるのは、俺と弟はいいけど、日本人の女の子は危険なので、彼女の手を握って、安全を確保しながら歩いた。まぁ、彼女はカメラを振り回すように撮影をしまくっていて、ちょっと興奮気味だったけどね。日本じゃ撮れない写真だろうから…。

ふと冷静になる瞬間ってのがあって、まるでドローンで空撮しているみたいに自分たちを見下ろす感じになったのだけどさ。

これって、まるでゾンビの群れよね。