それでまぁ、アムステルダムにはトラムが走っていて、
路面電車のことなのだけど、これに乗ってあちこち出かけていっていた。
美術館がたくさんあるし、週末にはフリーマーケットみたいなのがいろんなところで開催されている。トラムから見える風景がなかなか素敵だったのよね。
コロッケの自動販売機というのをよく見かけて、お腹がへったらそればっかり食べていた。
ある日そろそろ散髪をしないと、ちょっとまぁ長くなり過ぎたなと思ったので、
レッドラインのはずれにあった散髪屋さんに入った。
表通りから店を覗いたら、キレイな女性が優雅な動きで髪を切っていたのよ。
彼女は入っていった俺のところにやってきて、ちょっと失礼と言って髪の毛を触った。
ふ~む。どうしたものかという表情をしている。
あのね。この真っ直ぐの髪は私には無理なのよ。
そう言って彼女は店の外に俺をうながした。
この道をまっすぐ行くと、チャイナタウンに入る。
あの人たちの髪質はあなたと同じだから、チャイナタウンで切ってもらったらいいわ。
ごめんね。
彼女はそれだけ言うと店に戻ってしまったのだけど、
ああそうか、オランダ人ってウェーブのかかった髪が普通だから、
そういうことかと納得したのよね。それでまぁ中国人の店に行ったのだけど。
どうせすぐ伸びちゃうから、かなり短く切ってもらったのだけど、
ミーティング・ポイントに戻ると、隣のベッドのレズビアンのカップルから、
似合うじゃないと褒められた。
彼女たちは、2段ベッドの上下に寝ていたのだけど、
時々夜中にエロいムードが伝わってくることがあったのよね。
見ちゃ悪いと思って背中を向けるのだけど…朝になると狭いベッドに2人で寝ていたりするのよね。
アムステルダムを歩き回り、フリーマーケットを物色して、ミーティング・ポイントに戻る。
1階のバーでビールを飲み、テレビで当時大流行していた『サウス・パーク』を見て、みんなでゲラゲラ笑う。
レズビアンのカップルに、ねぇ誰を待っているのよ?
雰囲気で分かるのよねぇとか言われながらイルゼを待っていたのだけど、
いっこうに現れる気配がないので、そろそろ次の町に行こうかと思って、
中央駅にチケットを買いに行った。
イルゼからの絵ハガキには、なかなか車が売れなくて、
アムステルダムに着いたのは1ヶ月後くらいだったと書いてあって、
そりゃちょっと待っていられないよな。