『シンゴの旅ゆけば~!(136)ポカラの大事件③』

なぁ、その事故で亡くなったというネパール人の遺体を見たか?

ホテルのオヤジは、金髪野郎にそう訊いた。なんでも肝臓の手術をしたばかりだとかで、ちょっと動くのも億劫なのだと言っていた。だから、シンゴに整体してもらって本当に助かるよ。楽になるからな。そう言ってくれていたからね。楽しい整体タイムを中断した金髪野郎に対して、機嫌が悪くても、そりゃまぁ仕方ないよね。

いや、見ていないけど。でも、葬式だなんだって、大変なことになってるって聞いたよ。

それは英語でだろう?ネパール語はできないんだよな、あなたは。

まぁ、バックパッカーで旅をしていると、結構大掛かりなサギというか、ハメられるということはあるのよ。バンコクで仲良くなった奴から大麻をどうだと言われて、最初はちょっと怖いなと思いつつ…結局一緒に大麻タバコを吸うことになる。残った大麻をバッグに入れてホテルに戻った途端、警察がドアを叩く。逮捕されたくなかったら、ものすごい額の保釈金を払えと言われるのだけど、払わなかったら、バンコク・ヒルトン(バンコクの刑務所のことなんだけどね)送りになるぞと言われたら、それはまぁ借金しても払うしかない。

仲良くなった奴というのは、最初から大麻詐欺に嵌めようとして近づいてきているってのが、この話の裏なのだけど、そういう話は山ほどあるのよね。

だからまぁ、村の連中からバイク屋から全てグルということだってあるわけだ。

あのな。オヤジは言った。おまえたちは外国人で、もうすぐこの国を出ていく訳だ。だけど、俺はこの国の人間で、ポカラでずっとホテルをやっていく。だから、これ以上の手助けはできないな。本当のことなんて話すわけにはいかないし、誰かポカラの住人を悪くいう訳にもいかない。請求されている金を払わないのであれば、ここから先は日本人で知恵を絞るしかないな。

ごもっともだ。近所づきあいってものがあるだろうからね。金髪野郎を庇っても、いいことなんて何もない。住みづらくなるだけだ。

まぁでも、俺は知らねぇよ、あとは自分でなんとかしろって訳にもいかないのよね。これはまぁ俺の性格なのだろうけど、おせっかいだからね。

じゃあ、兄ちゃん。日本大使館に電話してみるか。俺はそう言った。