『シンゴの旅ゆけば~!(135)ポカラの大事件②』

金髪野郎が話してくれたのは、嘘だろって話だったけど、残念ながら現実にあったことなのよね。

金髪野郎は1人でポカラにやってきて、レンタルのバイクを借りた。友達になったネパール人の兄ちゃんと二人乗りで、その兄ちゃんの住んでいる村に行ったそうなのよ。なんでも村祭りがあるとかで。

それでまぁ、楽しく村祭りを見学していたそうなのだけど、酒だか薬草だかですっかり酩酊してしまって、眠り込んでしまった。その友達になった村の兄ちゃんの奥さんという人に起こされて、あなたの借りてきたバイクで夫はどこかに行ってしまったと言われたそうだ。この辺の話は後から英語のできるネパール人に通訳してもらったから分かったことで、とにかくいろんな人が騒いでいたり、怒ったりしているということしか、村では分からなかったそうなのね。

結果として、勝手にバイクに乗って行った兄ちゃんは事故で死んだらしい。それで、おまえの責任だと言われている。レンタルバイク屋の主人からは、バイクの代金を払えと脅されている。今もその男と仲間がホテルの外にいる…という状況になっているのだとか。

ああ、そりゃ大変だな。俺はそう言ったし、他の日本人も、ホテルのオヤジも一応はそう言っていたけど、まぁ俺たちには関係ないしなぁという態度だった。これは本当に旅をして学んだことの一つだし、人生で重要なことの一つだと思うのだけど、なんだかこの金髪野郎はいけすかないのよね。

どこが嫌いかと言われても困るけど、なんかいや~な感じなのよ。前にインドのマリアホテルで俺を含めて10人くらいで酒を飲んでいて、全員知り合って10分くらいしか経っていなかったのだけど、ツマミが欲しくなった。アメリカ人にイギリス人に、とにかく国籍はさまざまだったけど、おい、ちょっとツマミ買ってこいよと声をかけた(つまり、パシリに使おうと思ったわけよね)のは全員一致でイタリア人の男だったのね。いかにもパシリという顔をした男だったけど…。

つまり、何が言いたいかというと、人間関係なんて一瞬で決まってしまう。それも話す以前に決まる。金髪野郎をなんとかしてやらなきゃって気持ちが、そこにいた誰にも盛り上がってこなかったのは、こいつ嫌なヤツだなって見抜いちゃったからだと思うのよね。