シンゴの旅ゆけば~!(134)ポカラの大事件①』

前にも書いた気がするのだけど、ネパールのカトマンズからポカラ(一応、リゾート地なのよね)に向かうバスが谷に落ちた。

本当はそのバスに乗るはずだったのだけど、カトマンズのバス停に行ってみると、俺の乗る予定のバスはまだ来ていなくて、前のバスさえまだ出発していなかった。まぁ、よくある話なんだけどさ。

それで、運転手にこのバスに乗せてよと頼むとオーケーしてもらえたので、一本早いバスに乗って行ったのだけど、日本語が話せるオヤジの経営しているホテルで、なぜかそのオヤジに整体することになって、ロビーで腰を揉んだりしているところにスイス人が2人やってきた。

友達が乗ったバスが来ない。その前のバスに乗っていた日本人がここにいるでしょうと言うのだけど、それは俺のことだ。

翌朝バスが谷底に落ちて、スイス人の友達は大ケガをしてスイスに移送された話を聞いたのだけど、その後の話になる。それにしても、谷底に落ちなくてよかった…。

当時のネパールの観光ビザは15日と短かったので、そろそろインドにいこうかなとか、考えていた時なのだけど、毎晩オヤジに整体するのが日課になっていて、その代わりオヤジは何かしら晩ご飯を用意してくれたのよね。カツ丼とか出てきた時は感動したのだ。

そんなある日、ちょっとロン毛で金髪に髪を染めた日本人が、駆け込むようにホテルに入ってきて…助けてくださいと言ってロビーの椅子に座り込んだ。へなへなへなって、マンガだったら擬音が描き込まれそうな感じだったのよね。

ホテルのオヤジは日本の登山隊の世話をずっとしていて、それで日本語を覚えたらしいのだけど、そういう縁もあってホテルには日本人の客が多かった。その時も俺以外に2、3人日本人がいたと思う。

その連中と、俺と、オヤジが、なんだこいつはって感じで顔を見合わせていたのだけど、金髪の兄ちゃんは話を聞いてもらえますかと言って、入ってきた時より心持ち元気になった感じで話し始めた。ネパールの山奥で、日本人と、日本語の話せるネパール人に囲まれて、なんだかきっとホッとしたのだと思う。

ああ、兄ちゃん、何があったのよ?

俺がそう言うと…金髪野郎は話しはじめた。