『シンゴの旅ゆけば~!(133)ロサンジェルスのフッカー・ホテル⑥』

マシモ君が面白いところに連れていきますよと言って、本当に凄い場所に案内してくれた。

だだっ広い駐車場には、なぜかモアイの石像がたくさん立っている。なんだ、ここは?

駐車場の車は高級車ばかりで、お金持ちの匂いがプンプンした。Max Fieldという高級セレクトショップらしいのだけど、ちょっと店に入るのには勇気がいるのよね。俺は汚いジーンズに例のパーカーだし、弟のジーンズには穴が空いている。マシモ君もボーリングシャツだしね。まぁ、案の定入店しても無視された。あんたらが入ってきていいような店じゃないのよ。あからさまにそういう視線で見られている気がする。まぁ、でもいい経験だったけどね。1ドルの古着のスウェットを買おうかどうか悩んでいる人のいるスリフト・ショップからわずか数分で、Tシャツが500ドルする店があるわけだから。

俺と弟はロスからマイアミに飛ぶことになっていて、マシモ君はネバダからアリゾナあたりまで買い付けの旅を続けるそうだった。フッカーホテルの最後の夜に、近所の店でみんなで食事を食べた。ダイナーみたいな安い食堂だったけど、ステーキを食べ、ビールを飲んで、チップも入れると結構いい値段になった。

アメリカの映画によく出てくるような巨大なガラスの向こうを、うちのホテルのフッカー姉さんたちが出勤していくのが見えた。向こうはこちらには気づかなかったみたいだけど、朝食の時と違って、何だか元気そうで、化粧もバッチリ(かなり濃いめだけどね)きまっていた。早くお金を稼いで、自分の国に戻るなり、アメリカで普通の生活をできるなりできたらいいなと、彼女たちを見ていて思った。そりゃまぁ仕事とはいえ、危ないと思うのよ。

ポピコンには、毎朝1泊分の支払いを済ませていたから、チェックアウトといっても何もすることもなく(そもそも、部屋に鍵だってない)じゃあまたね、ありがとうと言って出て行こうとすると、相変わらず上半身は裸のままで、また来いよと言われた。奴のテンションの高さは天然もので、ドラッグとか、そういう理由じゃないことが分かったのはよかった。どうも結婚しているみたいだし…。

マシモ君が空港まで送ってくれて、出発ゲート前でさよならを言った。その後彼とは会ってないけれど、今でも古着屋さんをやっているのだろうか?まぁ、人がいいからきっと幸せにしているんじゃないかと思う。

ロスの空港でお別れなんて、まるで映画のようだね。マシモ君にそう言うと、彼は本当ですねと言って笑った。

そうそう、宝物とまではいかないけれど、俺が見つけたNIKEのスウェットに、日本で数万円になるものがあったのよね。首は擦り切れてヨレヨレだったけど、これはすぐ売れますよとマシモ君は喜んでくれた。

さようなら、フッカー・ホテル!