『シンゴの旅ゆけば~!(111)ニューヨーク~アムステルダム③』

いや、スパイ映画じゃないんだから、そのミーティング・ポイントってのはどこだよ?ってイルゼに訊くと、ミーティング・ポイントってホテルがアムステルダムにはあって、バックパッカー連中には有名なのだそうだ。

ああ、そういうことね。じゃあ早く車が売れるように祈っておくよと言って、自分の部屋に戻った。

結果的にイルゼとはそのホテルで会えなかったのよね。1週間くらい待ったのだけど、そもそも彼女の連絡先はドイツのものだし、スマホだって当時はない。ヨーロッパをまわって日本に戻ったら、イルゼから絵ハガキが届いていた。

あんた、どこにいるのよ?って書いてあったけど、そんなことを言われてもなぁ。

ウィーンで出会った男女がすれ違ってしまう『ビフォア・サンライズ』って映画があったけど、二人は次作の『ビフォア・サンセット』で9年後に再会することになる。イルゼとはそれきりで、まだどこかを旅しているような気がする。まぁ、人生は映画ではないからね。

それでまぁ、ミーティング・ポイントなのだけど、パキスタン人の兄弟が経営していて、フロントの奥にバーがあった。さらにその奥に階段があって、ベッドルームに行ける。セキュリティがかなりしっかりしていて、泊まり客でなければバーにも入れないのよ。

客室の隅にはコンクリートで固められたドラム缶がずらっと並んでいて、見たことのないくらい巨大な南京錠がついている。バックパックごと、貴重品も全部ドラム缶に放り込んで、鍵をかければ…盗まれる心配はない。そういうシステムだったのよね。

まぁ、治安が悪いっていやぁ、そういう町だからね。
特にレッドラインのあたりは、なかなかにヤバいからこのシステムはありがたかったのよね。