『シンゴの旅ゆけば~!(109)ニューヨーク~アムステルダム①』

好きな映画の一つが『パリ、テキサス』なのだけど、最近話題になった『PERFECT DAYS』を撮ったヴィム・ヴェンダースの作品なのよね。『PERFECT DAYS』の役所広司はトイレ清掃の仕事をしているのだけど、なんだか見たことのある公衆トイレばかり出てくるなぁと思ったら、だいたいうちサロンの近所や、渋谷区内にあるトイレばかりなのよね。まぁ、それはいいのだけど…。

『パリ、テキサス』というと、パリからテキサスへ行く映画のように思うだろうけど、違うのよ。アメリカのテキサス州にはパリという小さな町が現実にあって、それがタイトルになっているのだ。だからといって、その町が舞台になる訳でもないんだけどね。

今回の話はニューヨークとアムステルダムの話だけど、ニューヨーク州にあるアムステルダムという町の話ではなくて(そもそも、昔のニューヨークはニューアムステルダムと言われていたそうだけど)ニューヨークからアムステルダムに行く話です。

知り合いだった旅行代理店の男から、面白いチケットがあるって電話がかかってきたのだけど、ユナイテッド航空から凄いのが出たって話だった。

アメリカを4都市、ヨーロッパを2都市、好きな空港を選べて何と12万円ということだったのよね。まぁ、バイトしながらダラダラ女のケツばかり追いかけていた頃だったから(若い頃の俺は本当にアホだなと、この文章を書いていていつも思うのよ)よっしゃとチケットを買い、長い旅に出ることにした。

この時も例によってバカなことばかり起こったのだけど、今回はニューヨークの話。アメリカ最後の町で、この後アムステルダムに飛ぶことになっていた。

ニューヨークで泊まっていたのはビッグ・アップル・ホステルという安宿で、今はなくなってしまっているそうだけど、ここがいいホテルだったのよね。男女別の6人部屋で17ドルだったと思う。ロックフェラーセンターの近くにあって、交通の便も良かった。

巨大なビル群に4方向を囲まれたような、メインストリートからは見ることのできない小さな土地にホテルはあって、泊まっているアホなバックパッカー連中がビールを飲みに出てくるテラスは、ほとんど刑務所だったのよね。どっちを見てもビルの壁だったから。

そこでドイツ人の女性から声をかけられたのが始まりだった。