『シンゴの旅ゆけば~!(107)夜這い棒の話③』

まぁ、こういう話ってのはシラフでするものじゃないからね。例の日本食レストランのオーナーとお酒を飲んでいて、その首から下げているネックレスいいですねと俺が話したことから、そういう流れになったのよ。

ああ、これはな、ここだけの話だけどジュゴンの骨なんだよ。

ジュゴンって、人魚の元になったという動物ですよね。

まぁ、人魚ってのは無理があるけどな。カバみたいだから。今は保護されているけど、昔のパラオ人は食べたそうなんだよ。それで残った骨というのが、とんでもなく硬いそうなんだな。それを加工して、男連中は自分専用の夜這い棒ってのを作っていたらしい。

夜這い棒?うまい棒みたいな感じだな。

昔のパラオには電気がなかったから、夜は真っ暗だ。独身だとか、そうじゃなくても夜の漁に旦那が出ているとかで一人で寝ている女の人の家にな、男がこっそり忍び込むわけよ。

ワラのような植物で作った小屋で暮らしていたわけだから、そこからこの夜這い棒を差し込んだそうだ。例えば、シンゴの夜這い棒は星の形とか、俺のは三日月型とか、村の女性はみんな知っているから、真っ暗で何も見えなくても棒に触れれば、ああ、あいつが来たなと分かるそうなんだよ。オッケー、おいでということになると棒を引く。いや、あんたはごめんよってことになると、棒を押し返す。そういうシステムになっていて、女性には拒否権があるのよ。

ああ、なるほど。

その話を聞いていたから、お土産物のアクセサリーを作っているオヤジに俺の夜這い棒を作ってもらったのがこれだ。先は太陽の形になっている。いや、もちろん使ったことはないよ。今そんなことしたら逮捕される。

なんとまぁ、おおらかな話ですね。

パラオ航空に乗った時に、この夜這い棒を首から下げていたらな、年配のCAの女性が顔を真っ赤にして控え室に入ってしまってな。他の男性スタッフから、それをしまえ、今すぐしまえって怒られたよ。

そりゃそうですよ。猥褻物陳列罪にあたるでしょうから…。