シンゴ、寝てたの?
そう訊かれたのだけど、死んでましたとも言えないから、ああ、たぶんねと答えた。
次の人の番が来て、俺は足首をそっと持ち、オームと声を出した。でも、頭の中じゃずっと考えていたのよね。ヨーロッパで俺が死んだのはいつの話なんだろう?そもそも前世とかあるのか?
その日のスケジュールが終わって、ベジタリアン料理の夕食を食べた後、喫煙所に行ってタバコに火をつけた。俺以外にタバコを喫う人はいないみたいで、喫煙所じゃ初日からずっと1人だったのよ。
そこに女の子がやってきた。目の大きな子で、小柄なのだけど不思議と目立つタイプだったから名前も覚えていた。さっきの瞑想の時は同じグループにいたしね。
あれ、タバコ喫うんだっけ?
そう訊くと、首を振った。ちょっとシンゴに話があるのよ。彼女はそう言って俺の隣に座った。
ねぇ…瞑想の時だけど、死んでたでしょう?
いきなりそう言われて、むせるくらい驚いた。何でそんなこと分かるんだよ?
私は工業デザインの仕事をしているけど、副業もあるのよ。霊能者ってやつになると思う。あなたが瞑想している時に、ずっと見てたわ。この人は面白いなぁって思ってたのよね。
アウシュビッツに行ったことあるでしょ?
行った、行った、めちゃくちゃ怖い思いをして…ヘロヘロになったよ。
そこで死んだのよ。まだ5歳とか6歳だった。だから死んだ場所を訪ねたのね。生まれ変わるの早かったね。
そう言われても返答に困る。でも、それが本当だったらアウシュビッツで死んだ後、1970年に今の俺で生まれるまで、俺はどこで何をしていたのだ?
言いたいことだけ言うと、彼女は部屋に引き上げてしまったのだけど、頭の中は「?」でいっぱいで、俺は呆然としたまま、そこでずっとタバコを喫い続けていた。