『シンゴの旅ゆけば~!(89)前世の話②』

アメリカのセドナに住んでいるロバートって男と、その彼女(日本人なのよね。)が泊まり込みで瞑想を教えてくれるというので、八ヶ岳の麓の町に出かけて行った。紹介してくれたのが誰だったかは忘れてしまったけどね。

いろんな種類の瞑想を習ったのだけど、確か3日目に7人でする瞑想というのが始まった。なんでも古いユダヤのやり方らしい。1人は仰向けで寝る。あとの6人は頭、足首、手首あたりを持って寝ている人の周りに座る。インドで瞑想する時にオームっていう音を低い声で何度も繰り返すっていうのをやったことがあるのだけど、寝ている人以外の6人はそのオームを喉の奥から絞り出すような声で言い続ける。寝ている人は何もしなくていいらしい。

俺が寝る番が来て、じゃあ、よろしくねって言って横になった。

目を閉じて、仲間が出しているオームの声に耳を澄ませる。さすがに6人が一度にオームと言い出すと、なかなかに崇高な感じがするのよね。倍音ってやつらしい。

次の瞬間、俺は冬の曇り空を見上げていた。何かを焼いているような煙の匂いが漂っていて、おいおい、ここはどこだって思った。俺の頭の上には瞑想やってた部屋の天井があったはずだ。それに今は冬じゃない。

心の中はシーンと静まり返っていて、固定されたアングルでずっと空を見上げている。瞑想だから目を閉じていたはずなのに、どうして空が見えるんだろうと考えていたら…すごい事実がただ分かった。なぜかという理由もなく、絶対的な事実としてそのことを知ったのだ。

あ、俺は死んでるわ。