『シンゴの旅ゆけば~!(87)バラナシの葬送⑨』

ガンジス川に蹴り込まれたご遺体の焼け残りはどうなるのか?

川イルカってのがいて、食べてくれるのよね。

バシャって音がして川イルカが水面に出てきたのを見たのだけど、八景島にいるようなイルカじゃないのよ。とにかくデカい。そして青の混じったグレーみたいなのがイルカの色だと思っていたけど、ガンジス川のイルカはピンクというか、ベージュっぽい色をしていた。

なんでも、妊娠中に亡くなった方とか、毒蛇に噛まれて亡くなった方は火葬されず、そのまま重しをつけてガンジス川に沈められるらしい。それも、イルカが食べてくれるそうだ。

クミコハウスに戻っている間呆然としていた。ショックとか、そういうことじゃない。当たり前のことが、当たり前のように行われているだけなのだから、ショックなんてないよね。死んだ者を放っといたら腐るから、そりゃ焼くしかない。焼け残りを食べてくれる野生動物がいたら、じゃ、あとは任せたってするのが合理的だ。そうなのだ。ただそれだけなのよね。ショックを受けるような要素は何一つなく、もしショックを受ける奴がいたら、それは何ていうか、人間って生き物に期待しすぎている気がする。天使が降りてきて、ご遺体を連れていったりはしてくれない。

そうそう、こういう葬送の流れだから…インドには墓はない。すぐに生まれ変わると信じられている。

どう、1回で十分でしょ?セブリンがそう言った。

そうなんだろうけど、何回か行こうかな。

物好きねぇ。

何回か見たら、慣れるでしょ。

セブリンが帰国した後も、俺は何度か火葬を眺めに行った。

叔父が自殺したことは、それはまぁ記憶としては今も残っているけれど、思い出したところで感情が動くようなことはもうない。

どう死のうが、いつかはみんな死ぬ。致死率100パーセント。じゃ、それまでは楽しくやったほうがいい。

セブリン、無事に大学の単位取れたかな?