『シンゴの旅ゆけば~!(84)バラナシの葬送⑥』

自殺したいと思ったことはある?セブリンはそう言った。私はある。ありすぎるくらいある。自殺未遂をしたこともある。何度もある。

俺はないな。そもそも交通事故で7歳の時に1度死んだ。心臓が止まったそうだよ。オマケみたいな人生だね。だから、今さら死のうとは思わないのかもしれない。

家族が死んだ理由を考えても無駄よ。そんなことに意味はない。お腹が空いたら何か食べるでしょ。あんな感じよ。死にたいという気持ちがどこからかやってくる。だから死ぬ。自殺することに理由があったりしたら、そんなのは自殺じゃないわ。ただの逃避よ。あるいは復讐かもしれない。または、これが一番多いと思うけど、うっかり死んだか。

その夜本当に体調が悪くなったセブリンは、トイレを出たり入ったりしていた。トイレあたりにいた(クミコハウスはベッドもあるけど、基本はごろ寝なのよね。)グループに場所を代わってもらって、セブリンをトイレの前のスペースに横にならせた。スイス大使館にはセブリンの友人がすでに連絡を取っていて、数日中には彼女は帰国する手筈になっていた。夜中に吐いたものが喉に詰まってジミー・ヘンドリクスが死んだ話を知っていたから、俺はセブリンの隣で番をすることにした。

うつらうつらして、うたた寝程度の眠りに入ったセブリンが俺に身体を寄せてきた。それはそうだ。どれだけハードな過去があったって、彼女はまだ20歳を越えたばかりなのだ。まぁ、その距離だとドレッド準備中の頭が猛烈に臭ったけど、それはまぁ仕方ない。

何度も自殺未遂したんだろ?それでも生きてたんだから、きっと大丈夫だよ。それだけ下痢すりゃダイエットになるだろうし…。インドで太ったって言ってたろ。

翌朝何もつけない、焼いただけのトーストを食べているセブリンにそう言った。

そうね、私だっていつか死ぬけれど、ここじゃない、今じゃない。何度か死のギリギリまで行くとね…それが分かるようになるのよ。

シンゴ、あんたもまだ生きる。それも勘弁してくれというくらい長く生きる。私には分かる。