シンゴの旅ゆけば~!(71)マフィアの屋敷にホームステイ①

1997年11月17日午前9時のことだ。ルクソールのハトシェプスト女王葬祭殿でテロ事件が起こった。日本人も10人が亡くなることになった事件なのだけど…俺はイスラエルのエルサレムの安宿でダラダラと過ごしていた。

エジプトは危険だから行かない方がいいと、イスラエルの人たちには何度も言われたのだけど…俺は若かったし、今もバカだけど、今よりもっとバカだった。事件があったのだから、きっと警備は厳重になっているだろうし、まぁ行ってみようと思ったのよね。

エイラットという国境の町までバスで行き、エジプト国境を超えた。とりあえずカイロに向かおうと思ったのだけど、モーセが神さまから十戒を授かったシナイ山ってのが、途中にあるそうで、ちょっと寄り道していくことにした。

砂漠の中にポツンとあるホテルに泊まり、韓国人のバックパッカー連中がシナイ山に登るというので、連れていってくれないかと頼んだ。朝の3時にホテルを出発して、山頂で日の出を見るというので、前の晩は9時前に眠った。

古いキリスト教の伝統を守っているというコプト教寺院の隣を通って、山道に入っていくのだけど、これが結構キツイのよね。それに、11月とはいってもエジプトだし、そんな大したこたぁないだろうと思って薄手のジャンパーしか持ってきていなかったのだけど、山頂に着くと凍えるくらい冷え込んできた。

ベドウィンのおっさんが、日本人の兄さん、ブランケットを貸そうかと言ってくれたのだけど…そういう商売だからね。おいおい、ホテル泊まるより高いじゃね~かという金額だったので断った。値切るってのはアラブじゃ当たり前のことなのだけど、とりつく島がなかったのよね。

お兄さん、寒いならホッカイロをあげますよ。そう言われて…え、日本語じゃんって思って振り返ると、そこには日本人のじいちゃん、ばあちゃんが10人くらいいたのよね。