「子どもたちは、すでにこれまでのハロウィンでお金やお菓子を大人に要求していたので、このことを「建設的な伝統」に変えてみようと試みたのだ。
すなわち、隣人からお菓子をもらう際に、それを丁寧に尋ねる方法を子どもたちに教え、準備が整ったら大人にお菓子を持たせるように促す。
これを「トリック・オア・トリート(trick or treat)」と呼ぶことにした。
1930年代後半に、アメリカの雑誌『アメリカン・ホーム』に、「トリック・オア・トリート」についての最初の記事が掲載された。
数多くの家族向け、子ども向けのテレビやラジオ番組でも全国の視聴者に対して、トリック・オア・トリートのアイディアを発表し続けた。
1952年に発表されたドナルド・ダック(Donald Duck)の漫画『トリック・トリート』は、映画とテレビを通じて数百万人にこの内容を伝えた。これは、おとぎ話の中で、「爆薬のかわりにキャンディーを与える」という内容を含んでいた。」
スミソニアン・マガジンはトリック・オア・トリートというハロウィンの代名詞的な言葉がどのように生まれたかについても報告しているのですけど…だれの言葉だったのかは忘れましたけど「人間は起源をあっさりと忘れてしまう動物」ですよね。魔法の呪文のようなトリック・オア・トリートが、まさか行政主導で作られた言葉だったとは…やれやれ。
とはいえ、この行事の根っこにあるのは、折口信夫の言うところの「まれびと」的なものの到来だったことは間違いがないと思うのです。
古代ケルト人たちは、ハロウィンの日をサムハイン(Samhain)と呼んで、収穫祭をおこなっていたそうなのですけど、その日は善と悪の両方の霊を解放する現実の裂け目を作りだす日だととされていたそうです。
善と悪の両方というのが、無秩序でまさに「無意識」的だと思うのですけど、ヨーロッパの一部ではクリスマスだって善悪両方の「まれびと」がやってきていたのです。善の担当はサンタクロースですね。優しい子供たちの守護者。羊のツノのある悪の担当はクランプス。良い子にしていない子供を叩いて回っていたそうです。
ですから、ハロウィンだって両儀的であることは間違いがない。トリック・オア・トリートとは、善悪どちらかを選べということなのでしょうけど(そう考えるとうまい発想ですね)両方がやってくるからこそ意味がある。私はそう思いますけどね。