『シンゴの整体(51)この世で一番すげぇ整体!②』

なんだかよく分からない言葉の、結構まったりした音楽がかかっていて、なんだか知らないけど、薬草のような匂いのするお香が焚かれていて、時々鐘のような金属音がどこからか聞こえてきた。

不思議よねぇ、俺はいったいボリビアなんかで、こんなに酔っ払って、何をやっているんだろうねぇとか考えながら、薄ぼんやりと部屋を漂っている煙をぼーっと見ていた。
時間がどれくらい経ったのか、あるいはほとんど経っていないのか、それもよく分からない。

完全に整体のことなんて忘れていたのだけど、いきなりパウロが椅子から立ち上がって、おい、シンゴ、整体するからこっちに来いみたいなことを言った。
なんとかかんとかプレファボーレみたいなスペイン語だ。

ああ、そうだ、そうだ、整体だったなって思い出したのだけど、同時にパウロはお金を払ってと言わないから、整体終わったら、シンゴの払える金額でいいから払ってやってくれなって、アメリカの友達から言われたことを思い出した。

なんでもやってくれという気持ちになっていたのだけど、ぐでんぐでんで立っているのも辛い。
仙人はゲラゲラ笑いながら、じゃ、その椅子に座れよと、木の椅子を指差した。

椅子に座ると、じゃ、やるかねって感じでパウロがスーッと近づいてきたのだけど、あ、一応俺の身体の不調について書いておくね。

またこれもそのうち旅の話の方に書くけど、バリ島でバリアン(インドネシアのシャーマン)の女性から腰痛治してやるって言われて、足の指を引っ張られてから、膝が痛くて正座なんてとてもできない。
腰痛は悪化した。やれやれって状態だったのよね。

いきなり、仙人に額を指で突かれた。

トンって感じだけど、突かれた瞬間はさほど強くなかったのだけど、そのまま後ろに頭を倒された感じだったのよね。
まぁ、仙人が指を離すと、そのままって訳にもいかないから、首を元の位置に戻す。
首が戻ったタイミングで、今度はみぞおちあたりを突かれた。
これも痛くはないのだけど、何か強い力が、背中まで抜けていくような感じがしたのよ。

突く、押す、金庫のダイヤルを回すような指の形でひねる、ちょっと引っ張る…
パウロの動きって、そんな感じで整体ぽくはないのよ。

何が起こっているのか、自分でもよく分からないのね。