『シンゴの旅ゆけば~!(81)バラナシの葬送③』

コルカタのマリアホテルは、アホなバックパッカーだらけだったのだけど、中にはボランティアをしに来ている立派な方もいる。マザー・テレサの『死を待つ人の家』で働いているいろいろな国の人たちが、当時のマリアホテルには大勢泊まっていた。

インドに来る前にマザー・テレサの本を読んで、なんて凄い人だろうと思っていた。ノーベル平和賞を受賞したときのインタビューで「世界平和のために、私たちは何をしたらいいでしょうかと質問された彼女はこう答えたらしい。「家へ帰って、あなたの家族を愛しなさい」おお、すげぇ。

まぁ、だいたい計画性ゼロで旅に出てしまう俺なのだけど、この時はちょっと考えていたことがあったのだ。インドで行き倒れになっている人たち(その数はものすごく多い。路上生活者も多いからね。)を連れてきて、看取ってあげるホスピスみたいな場所をマザー・テレサがやっていることは知っていたから、俺もちょっとボランティアをしてみようかと思っていたのだ。

でも、それは止めることにした。

マリアホテルにいると、アホなバックパッカーとボランティア参加者の違いはすぐに分かるようになる。何ていうのか、死んでいく人たちを前にして、何もできることがないから背中をさすってあげるとか、手を握ってあげるとかしている方たちというのは、ちゃんとしているのよ。でも、ちゃんとしているということは、それが何であれ目的があるということだと思う。自殺した叔父のことがなかったら、俺はボランティアをしたかと考えたら…たぶんしなかっただろう。そう考えると、何だかやる気が失せてしまった。ボランティア希望者が多すぎて、順番待ちというのも面倒だったし。ラーメン屋でもなんでも並ぶの嫌いなのよね。

うまく説明できなのだけど、俺がボランティアをしたいという目的のような何かが恥ずかしくなったのだと思うのよね。それは、救われたいとか、そういう感じのことだと思うのだけど…。

まぁ結果的に、マリアホテルでボランティアみたいなことをすることになったしね。3日マラリアで死にかけているイタリア人を看病することになったのよ。3日マラリアってのは、3日高熱が続き、次の3日は元気になる。また3日熱が出るを繰り返して、衰弱して死んでしまうという怖い病気なのだけど…これはヤバいなと思ったから、領事館に連絡して入院させることにした。だから、たぶん死んでないと思う。