『火あぶりにされたサンタクロース⑥』

13世紀の後半の聖人伝『黄金伝説』をまとめたヤコブズ・デ・ウォラギネさんだって、オランダ人移民と聖ニコラウスに特別な関係があるような話ができあがり、なぜか北極に住んでいる陽気なおじいさんに変わっていくなんて、想像もできなかったでしょうね。

ディジョンの大聖堂前で火あぶりにされたサンタクロースだって、元を辿れば聖ニコラウスなのですから、教会は身内を火あぶりにしたということになってしまう訳です。
まぁ、身内と言うよりも聖人ですからね、崇拝される対象ですね。

あなたが信じているもの。おそらく信じているということさえ意識に上がってこないくらい、それが普通になっている信念。つまり、これが「あたりまえ」だと思って、疑いもしないこと。

そういう信念で、こころがいっぱいになっているのが普通ですし、もしその信念がなかったら、私たちの見ている世界はグラグラと揺れてしまうことになるでしょうね。
安心したいから(世界が確固たるものとして存在していることを信じたいから)その信念を採用したといえるかもしれないです。

でもですよ。

その信念が間違っていることもある。間違っていなくても、それを採用することで自分を自分で損なってしまうこともある。

敬虔なクリスチャンが、聖ニコラウスを火あぶりにするなんてことも起こる。

まずは…あ、これはもしかして不要な信念かもしれない、誤解かもしれない、昔はこの信念でうまくいったけれど、現在はすでに時代遅れになっているのかもしれない。
そういうことに気づくことが大事なのですけど、何しろ恐ろしいことに「あたりまえ」になっているのですから、自分で気づくことは、なかなかに難しい。

気付いたとしても、いきなり信じていたことを捨ててしまったら、自分の世界が揺れ動いてしまうことになる。

カウンセリングというメソッドが存在する理由の一つは、きっと気づくことと、変更することに a little helpとして介入することだと思っているのです。

いや、サンタクロースを火あぶりにしたいと言うなら止めないですけど、歴史的に考えてみると、どうやら聖ニコラウスを焼こうとしていることになるようですよ。本当に火をつけます?

問いかけられて、クライアントが考える。カウンセリングはそこから始まります。