『火あぶりにされたサンタクロース④』

聖ニコラウス。サンタクロースのモデルになったと言われている聖人なのですけど、彼が生きていた時代は4世紀前半です。

祈りで嵐を鎮めて、船を救ったとか、貧しい者に施しを与えたとか、結婚する持参金を娘に与えたとか、塩漬けになって死後8年経っていた子供たちを蘇らせたとか、さまざまな伝承があるのですけど、それが本当だったかどうかはともかく、今はトルコになっているリュキア地方のミラという町に実在していた人物のようです。

彼が有名になったのは、13世紀に書かれて、当時のヨーロッパでベストセラーになった『黄金伝説』という聖人伝ですから(たくさんの聖人が紹介される中で、聖ニコラウスが一番大きく扱われていたとか)1000年経って、いきなり有名になった人物と言えると思います。それも凄いですけどね。

聖ニコラウスは船乗りと子供の守護聖人で、彼の祝日は12月6日です。この日になると、中世ヨーロッパの子供たちは、1年を振り返って、いい子にしていたかどうかの反省をしていたのだとか。

どうしてそうなってしまったのか、なぜそんなことが信じられるようになったのか。今からいくら考えても正確なところは分からない。古くから伝わっている伝承というのはそういうものですけど、サンタクロースについては、なんとなく見えてくる変遷の流れを辿れるのですね。

①13世紀に突然有名になった聖ニコラウスは、子供の守護聖人。

②16世紀のオランダでは、聖ニコラウスの日の前夜に、彼に扮した男性がお供の黒人を連れて家々をまわり、良い子にはお菓子を、悪い子にはムチ打ちをくれた。オランダでは、「シントニコラース」と呼ばれていた。

このお供の黒人というのは、ドイツなどで行われていた冬至の祭りに登場する、クランプスという悪魔のようなものでしょうね。死者や精霊の住む世界からやってくるのは、善神だけではなく、悪神もセットだったのです。日本で言ったら、たぶん秋田のナマハゲのような感じだと思います。

③アメリカ新大陸のマンハッタン入植地で(当時はニューヨークではなく、ニューアムステルダムと呼ばれていました)「シントニコラース」は「シンタクラース」と呼ばれるようになった。

サンタさんに近づいてきましたね。