『火あぶりにされたサンタクロース②』

そうそう、アメリカの家庭ではクッキーとミルクをサンタクロースのために用意することが習慣になっています。

私はかなりの年齢になるまでサンタクロースの実在を信じていたのですけど、サンタさんが私の用意したクッキーを食べ、ミルクを飲んでいる姿をこっそり盗み見したからなんですね。

どうも父親が雇ったサンタクロースの扮装をした人だったようですけど…その記憶があったから、サンタクロースはいるのかなんて疑いを持つことはなかったのです。

それはともかく『クリスマス・キャロル』にはじまって、この季節を描いた小説であるとか、映画は数多くありますけど、レヴィ=ストロースの書いた『火あぶりにされたサンタクロース』という本をご存知でしょうか?

その本を読んで初めて知ったのですけど、本当にサンタクロースが火あぶりにされるという事件が起こったのです。
1951年の12月23日。フランスのディジョンという町の大聖堂で磔にされたサンタクロースは、その後焼かれたのです。

いや、もちろんハリボテの人形ですけどね。

クリスマスといったら、カソリックではイエス・キリストの降誕祭を祝う日です。
それなのに、第二次世界大戦後にプロテスタントのアメリカから入ってきたアメリカ式サンタクロース(私たちがイメージするサンタクロースですね)は、キリストの降誕祭をまったく別の形に変えてしまおうとしている。
あるいは、キリスト教の伝統になかったものを降誕祭の日に混ぜてしまうとディジョンの聖職者たちは考えたのです。

それで教会の横領者にして異端者として断罪されたサンタクロースは、火あぶりにされたのですけど…何もそこまでしなくてもいいのでは?

でもね、実は歴史的に遡ってみると、こうなることはある意味では必然だったようなのです。

12月25日と決められていた訳ではありませんけど、このあたりというのは、ヨーロッパでは古くから冬至の祭りが行われていたのですね。
太陽が出ている時間が最も短くなる冬至は、そこから太陽が
活していく訳ですから、復活を意味するポジティブな意味合いがあります。

同時に死者であるとか、悪魔であるとか、普段であれば現実の世界と隔てられている存在が訪れる日でもあったのです。