『私の知らない90年代 ②』

私は90年代の日本の状況を知りませんし、それじゃあニューヨークを知っているのかと言われても、大学の勉強や仕事に追われていた記憶しかないのですけどね。

『恋する惑星』と『天使の涙』をリアルタイムで日本で見た(ものすごく流行したそうです)スタッフに言わせると、映画として評価が高いから観客が集まったと言うよりも、ウォン・カーウァイの映画を見ることがオシャレだったそうですね。

もちろん映画としても素晴らしいと思うのですけど…そうか、そういう需要のされ方をしていたのかと思うと、あながちジム・ジャームッシュを思い出した私の印象というのは間違っていないのかもしれない。

そういえば、この手の映画って最近あまり見かけない気がするんですよね。
映画全体を捉えようとしても、ぼんやりとしていて、手触りのようなものしか残らない。ストーリーが重要視されていなくて、どんな話と訊かれても上手に要約しがたい。映像がきれいだとか、スタイリッシュだという印象はあるのだけど、思い出せるのはいくつかの断片的なシーンだけ。そういう映画のことですけど。

ジャームッシュも、ちゃんと映画らしい映画を撮るようになりましたしね。
2人の映画作家の作品は手作りっぽいというか、どこかチープな感じがする。あんまりお金がかかってなさそうと言うと失礼ですけど、まぁそういう印象があるのです。

最近のハリウッドの映画というのは綿密に作り込まれている訳です。まぁ、映画が投資の対象になっていますから仕方ないのでしょうけどね。エモーショナル・コントロールの専門家が関わっているなと感じてしまうのですよね。

インディーズ映画という括りになるのでしょうけど、ウォン・カーウァイにしても、ジム・ジャームッシュにしても、好きなように撮っている。少なくともそういう印象がある訳です。となると、画面を見ていると、監督の人となりが透けて見えてくるということになる。
この2人の映画を見ていると、ちょっと拗ねているのだけど、本質的には優しい男がなんとなく浮かび上がってくる。

ハスに構えているのだけど、本質的には優しい。あ、これって漫画に出てくる不良少年みたいですね。