私が置き忘れてしまった財布を届けてくれた方の善意の出所は、盗んだりしたら「世間」に顔向けできなくなるからではないだろうか?
私はそう思ったのですね。そして日本の治安が良いのは、シンガポールのように法規制が厳しいからではなく、暗黙理に「世間」を気にしているからなのではないかとも思うのです。
日本は世界一同調圧力の強い国だ。なぜなら災害が多くて、集団で復興しなければいけない歴史を繰り返してきたからだ。
これはよく言われる同調圧力の強い(言い換えれば「世間」が強力な)理由ですけどね。どうもそれだけではないように思うのですね。集団で作業をする必要がある稲作文化だったからとか、儒教的な背景があるとか、他にもたくさん理由はあげられると思うのですけど、いずれにしろ同調圧力が強い国なのは間違いがないでしょう。
日本人はもっと「社会話」をするべきなんですね。「世間話』は上手くなったんだけれど、『社会話』のスキルに関しては下手なまま。僕は司会をしているNHKの『COOL JAPAN』って番組で、「どこでパートナーを見つけましたか?」と聞いたら、日本人は圧倒的に職場や学校、友だちの紹介が多いんだけど、海外の人たちからは銀行の窓口で並んでいたとか、公園とかパブって答えが返ってくる。「社会」の場所でパートナーを見つけてるんですね。「世間」じゃない理由を聞くと、「別れたりしたら職場の雰囲気が悪くなる」と。それはやっぱり知恵だよね。ちゃんと「社会話」ができるからパートナーも見つけられる。日本人も身につけていったら幸せになれるんじゃないかと思います。
鴻上尚史さんはそう仰っているのですけど、確かにそうかもしれないですね。パーティーで会話をすることが苦手という人がこんなに多いんだと、日本に来た当初に驚いたことがありましたからね。