『10000時間仮説③』

では、どうやったら記憶を手続き記憶にすることができるのか?

つまり、羽生名人のようになれるのかということなのですけど…繰り返し反復するしか方法がないのですね。そして、反復練習する期間というのが最低でも10000時間必要と言われています。

これが10000時間仮説なのです。

オリンピックなどで、まだローティーンの選手がメダルを獲得するなんてことがありますけど、彼ら、彼女らは、おそらくまだ幼少の頃からトレーニングを反復し続けて10000時間を越える経験を持っているのだと思うのですね。

1日3時間の練習を365日休まずに続けたとすると…10年後には10950時間になります。
5歳で練習をはじめて、10年後には考えなくても身体が動くようになる。
もちろんもっと長時間のトレーニングに打ち込めば、短い期間で10000時間を超えることも可能です。

「やり抜く力」のダックワース教授の「課外活動は最低でも2年以上続けさせる」と言うアドバイスは、何かを継続する粘り強さを身につけるためには2年間続けることが重要という意味なのですけど、さらにそれを続けて…10000時間を超えるようになると、その技能は一生忘れることがなくなるのです。

自分が打ち込んでいる何かを反復し続けて、「手続き記憶」化する。それはつまり、無意識に任せることができるようになるということですけど、それが何であれ、何かの技能を手続き記憶にする経験を持っている方というのは、メンタルが強いように感じるのですね。

10000時間のトレーニングをこなしたのですから、間違いなく「やり抜く力」は高いでしょう。

「やり抜く力」を構成するのは…Guts(度胸)、Resilience(復元力)、Initiative(自発性)、Tenacity(執念)でしたけど、それはまぁ、こういう能力が高い方というのはメンタルがが弱いわけがないじゃないの。そう言われてしまいそうですけど、それだけではないのです。

無意識に任せられる。

それは、別の言い方をすると…自分自身を信じることができるという意味になると思うのですね。

それも、自分自身で私は◯◯だと思っている自己認識としての自分自身を信じるのではなく、自分というのは自分自身でもよく分からないけれど、それでも自分を信じるという、言ってみれば無根拠な信頼を自分に向けることができるようになる。それが「手続き記憶」化を経験した者の強みだと思うのです。