『シンゴの整体(32)駆け出しの頃①』

考えてみたら…整体を仕事にして25年くらいになるのだけど、JRのCMみたいに「そうだ 京都 行こう。」なんて感じで「よし 整体を 仕事にしよう。」と決めたわけでは全くなかったのよね。

ちょうど30歳になったかどうかってところだったのだけど、うちの母親が倒れてしまって、介護が必要になったのよ。当時は海外をフラフラとほっつき歩いて、金がなくなると帰国してアルバイトって生活だったから、じゃあ地元に戻るかって、軽い気持ちで帰ったのよね。

だいたいバックパッカーの合言葉ってのが「Don’t trust over 30」って時代だからね。30歳までには俺は死ぬんじゃないかって思っていたけど、まぁ何度か死にかけはしたものの生きていたから、何をしようかなとは考えていたのだけど、まさか地元に戻るようなことになるとは思ってもみなかった。

これは誰かに教えてもらったのだけど、人間って2種類いるそうで、1つ目のタイプは007型、2つ目のタイプはダイ・ハード型なのだそうだ。

007ってのは好き勝手にやっているようで、実は公務員でしょ。MI6の諜報部員で確か海軍の中佐でもある。だから、映画には出てこないけど、きっと書類仕事とかしているはずなのね。ちゃんとどういう組織と戦っていて、その組織をやっつけると、こういういいことがある(まぁだいたい世界が平和になるってことだろうけど)そういう計画のもとに行動している。

ダイ・ハードってのは、離婚しそうになっている奥さんをクリスマスの食事に誘いに行ったら、奥さんの会社がテロリストに占拠されていて、なんだか分からないけど撃ってくるから応戦しているうちに巻き込まれてしまうって話だ。どうして俺がこんな目にあわなきゃいけないんだって、ずっとぼやきながら戦っているのよね。

この巻き込まれるってのがミソだと思うのだけど、俺は間違いなくダイ・ハード型なのよ。

だからまぁ、今度はそう来たかって思いながら田舎に戻ったのだけど、介護って意外に大変なのよね。だからまぁ、フルタイムで勤務するような仕事ってのはできそうにないし(まぁ、正直に言うと、どこかに勤めるというのは向いていないしね。)さて、どうしようかなと考えていて、閃いたのよね。