『私の知らない90年代①』

Amazonの配信で映画を見ることも多いのですけど、うちのテレビはたいして大きくないし、それにこれはもう映画好きの常套句のようなものですけど、映画館のスクリーンで見たいのですよね。

それでまぁ、あちこちの映画館に出かけていくのですけど、最近は名画座と呼ばれている(昔は二番館と言ったそうですけど)小ぶりな映画館にもよく足を運んでいます。

下高井戸シネマとか、早稲田松竹とか、なんだかレトロな雰囲気が気に入っているのですけど、目黒シネマが4Kプロジェクターを導入したそうで、それに合わせて4Kになった映画の特集上映が行われていました。『ノスタルジア』はこないだ見たし、『ピアノ・レッスン』に行ってみようかなと思っていたのですけど、時間の都合で断念しました。

かなり有名ではあるけれど、見たことがなかったウォン・カーウァイの映画も2本かかっていて、こちらは見ることができたのですね。『恋する惑星』と『天使の涙』ですけど。

クリストファー・ドイルのカメラが美しい。音楽のセレクションがうまい。これはいいものを見たなぁと帰路についたのですけど、あれ、ストーリーはどんな話だったっけ?

翌日にはそう思ってしまうような映画(と言われても、イメージしにくいでしょうけど)だったのですね。かわりに『カリフォルニア・ドリーム』とか『オンリー・ユー』といった映画で使われた曲が頭の中をぐるぐる回ってしまって、ついつい口ずさんでしまうのですよね。

不思議な映画だなぁと思ったのですけど、ああ、ほらほら、あの映画に似ているとトニー・レオンを見ながら考えていたのですけど…ジム・ジャームッシュの映画ですね。『ナイト・オン・ザ・プラネット』とか『ダウン・バイ・ロー』と印象が重なるのです。

『天使の涙』で、亡くなったお父さんを撮ったビデオを、金城武が見つめているシーン。いつまでも子供のままで、お父さんと暮らしていたかったというモノローグが入るのですけど(金城武は発話が不自由という設定なのです)そのシーンの彼の横顔だけで、これは名画だと断言できてしまう。

子供っぽさと、寂しさと、痛みのようなものがないまぜになった表情と言うのかな…?

翌日サロンでスタッフにそんな話ばかりしていたのですけど、あれは本当に良かったなぁ。