知人に面白いからと薦められて『はじめての人類学』という本を読んだのですけど、本当に面白
かったのです。というよりも、人類学という学問に興味津々になってしまって、ティム・インゴルド
の本をAmazonで買ったくらいです。
この本は講談社現代新書というレーベルなのですけど、そもそも新書というタイプの本ってアメリカで
は見かけたことがないのですね。アメリカにあるのは、ハードカバーと、廉価版のペイパーバック、
それから紙の質のよくないパルプと呼ばれている本くらいのもので、新書にあたるものはないような。
調べてみたら、フランスには新書に近いク・セ・ジュというジャンルがあるそうなのですけど、
学生が参考書として使う本だそうですから、新書とは違いますね。来日したエマニュエル・トッドが、
日本語訳がシンショで出るとそのまま発音していたそうですから、新書は日本独自のものなのかも
しれないですね。
ちなみに、新書を最初に出したのは岩波書店だそうで、参考にしたのはイギリスのペンギン・ブックス
(シェイクスピアとか、ペンギン・ブックスで読んだことを思い出して懐かしくなりました)だそう
ですよ。
『本の性格上、新書は「やさしく」また「わかりやすく」書くことを求められる。だが、「やさしく」
また「わかりやすく」書くとは、どういうことか。その問題は、「いかに」そうするかという技術的な
次元に収斂されがちだが、書く主体として、そもそもそのように文体を場合に応じて変えられるのか
どうか。変えられるとして、「やさしく」書く場合、想定する読者への視線に何らかの変化が生じない
だろうか。新書の誕生は、おそらくそのような文体の問題をも提起した。』
『岩波新書の歴史』という本があるそうで、そこには新書についてこう書かれているそうです。
『はじめての人類学』(奥野克己著)は人類学なんて素人もいいところの私をグッと掴んだのです
から、新書としての機能をバッチリはたしている本なのだと思います。