主人公は墓泥棒(トンパローリ)なのですから、エトルリア人の墓に残された埋葬品というのは、お金と交換するための商品です。
そこに美的な価値を見出す市場があるからこそ、盗み出した埋葬品はお金に交換できる。
特別お金を儲けようという意識がある訳ではないアーサーですけど、生きるためにはお金が必要です。自分にあるのは、なぜか遺跡を見つけてしまう能力だけ。だから、その能力を使って墓泥棒をしてお金に変えている。
ところが、同時に彼はキメラ(幻想)も追っているのです。失ってしまった女性を取り戻すこと。そして、地下に降りていくことで、いつか女性のいる他界とつながることができると思っているようなのです。
今まではずっと他界とつながれなかった。それはなぜかを、やはり現実感のないイタリアという名前のポルトガル人の女性の声から聞き取ります。
「死んだ人から盗むなんてよくない。(埋葬品は)人の目を喜ばせる物じゃない、魂のための物よ」
それでアーサーは、盗み出した女神の頭像を湖に投げ込んでしまうのです。
だけど、そうしてアーサーの心が変化したからこそ、地下墓地の奥の部屋から、彼は他界へ入っていくことができた。
やっぱり、この映画は寓話なのですね。