アレゴリーという文学のジャンル。日本では寓話と訳されることが多いと思いますけど、この手の話が好きなのですね。
寓意とは「他の物事に仮託して、ある意味をあらわすこと」ですけど、教訓めいたことを、物語の形式で伝えること…例えばイソップ童話ですね。そう考えると分かりやすいと思います。
最近文庫になったガルシア・マルケスの『百年の孤独』とかね。ホットチョコレートを飲んで空中に浮いてしまう神父さんとか、それはちょっとありえないでしょというシーンがしれっと出てきますから。
なんだかボーッとしていて、なぜかエトルリア人の遺跡(墓地ですけどね)を発見する能力を持ったアーサー。イギリス人らしいのですけど、何がしたいのか、何を求めているのかよく分からない。墓泥棒をしながら小銭を稼いで暮らしているのですけど、どうやら彼が求めているのは失った婚約者だということが少しずつ分かってくる。
頻繁に鳥が出てきて、おそらくカメラを使い分けているのでしょうけど、そういう時はざらっとした質感の画面に切り替わる。映画の中ではキメラ(幻想)と呼ばれている、失った女性との記憶も同じような質感の画面になる。車掌と思っていた男がエトルリア人の死者であったり、ニットワンピースのほつれた毛糸の先が地面に埋まってしまうとか、なんだかあやふやなことが次々に起こる。
あちらにフラフラ、こちらにフラフラしているうちに、映画は静かに進んでいくのですけど、結局のところ、彼が映画ですることといえば、墓泥棒ですからね…地下に降りていくことなのです。
地下に降りる。無意識に降りていく。心理学的なメタファーですけど、映画や文学では最もポピュラーなモチーフの一つでしょうね。