前回書いたセノイ族はマレーシアに暮らす民族ですけど、北米にも夢と関わりの深いネイティブ・アメリカンの部族がいるのです。
オジブワ族と呼ばれる彼らには、夢を専門に扱うシャーマンのような職種まで存在しているそうです。
夢を人生で大切なものとみなすこと。そうすれば、あなたは価値のある夢をみて、それを思い出すことができる。そうすると、目覚めている実生活と夢の関わりが深まっていく。
基本的には、オジブワ族は夢をそのように考えていて、夢の中で覚えた歌をこちらの世界に持って戻ることもあれば、反対に現実の世界から夢の世界へ持っていきたいと願うものを持ち込むこともできる。つまり、人間というのは2つの世界を同時に生きている存在であると、彼らは考えているのです。
イギリスの詩人サミュエル・テイラー・コールリッジをご存知の方も多いと思うのですけど、彼の長詩『クビライ・カーン』は、彼が夢の世界から持ち帰ったものだと本人が語っています。
『バーチャスの遍歴』という歴史書を読みながら、うたた寝してしまったコールリッジは、夢の中で完全な形で作品を夢に見ます。3時間後に目が覚めて、ノートに書き留めようとしていたのですけど、夢の中で与えられた詩は200ないし300行あったそうです。
ところが、54行を思い出していたところで来客があり、1時間後に客が帰った後思い出そうとしたら…忘れてしまっていた。ですから、コールリッジは相当に忌々しい思いをしたそうですよ。
人間は、自分で自覚できる「意識」だけでなく、自分では感知できないけれど存在し、どうやらそちらの方が重要である「無意識」を含めた全体で1つの人格を形づくっています。ですから、彼の『クビライ・カーン』はまさしくコールリッジ作でいいのですけど、普通の意味での作者という訳ではないですね。
夢からインスピレーションを得た芸術作品というのは数多いですし、やっぱり睡眠って大切ですね。