『やり抜く力』

ニューヨークを流れているハドソン川の上流に、ウエストポイント陸軍士官学校があります。

学力試験に合格しなければ、もちろん入学できないのですけど、高校時代の成績や、ボランティア経験、部活動での評価などもチェックされて、そう簡単に入ることのできないアメリカの難関校の一つなのですね。

ところが、入学してきた生徒たちの20パーセントが、6ヶ月以内に退学してしまう。「ビースト」と呼ばれている基礎訓練に絶えられないのです。

それであれば、入学してもらう以前に、この生徒は続けていくことができるのかどうかが分かれば、士官学校としても無駄な予算を使わずに済みますよね。

退学する生徒と、続ける生徒を分けるのは一体何なのか?

ウエストポイントは心理学者や、有識者にお願いして研究をしました。何と60年もその研究は続いています。ところが、60年たっても答えは見つからなかったのです。

最近になって、アンジェラ・ダックワースさんという心理学者が、とうとうその答えを見つけることができました。

その答えは「やり抜く力」を持っているかどうかなのですけど、英語で「Grit」と呼ばれている力が存在することを、彼女は発見したのです。

Guts(日本語でいうところの、ガッツですね)
Resilience(レジリエンス。心の回復能力です)
Initiative(イニシアチブ。イニシアチブを取るとか言いますよね)
Tenacity(テナシティー。粘り強さ)

この頭文字をとって「Grit」なのですけど、簡単なテストでわかるそうです。

「Gritやり抜く力」で検索すれば、すぐに出てきますから、自分の「Grit」力をチェックしてみるのも面白いと思います。

彼女の書いた本を読んでいて、これは名言だなと感じる言葉が出てきました。

天賦の才に対するえこひいきは、私たちのなかに潜んでいる偏見のひとつで、努力によって成功を収めた人のことも、「生まれつき才能があったから」と決めつけたり、華々しく活躍している人を見ては、ずば抜けた才能に憧れたりする。

人生がうまくいっていないと、あの人は才能があるからとぼやいてしまう。でも、才能よりも「Grit」だと彼女は言いたいのですね。

そもそも、彼女は父親から「いいか、おまえは天才じゃないぞ」と言われて育ったのだそうです。それが別名「天才賞」と呼ばれている「マッカーサー賞」を受賞した。

本のまえがきに、彼女は書いています。

お父さん、長い目で見れば才能よりも重要なのは、「やり抜く力」なのよ。

英語のことわざにも、こういうのがあるのです。

The race is not to the swift, nor the battle to the strong.

早い者が競争に勝ち、強い者が戦いに勝つとは限らない。

そうだと思います。

コツコツやっていくことができる人が、最後には結果を出す。

誰だったか忘れましたけど、プロのサッカー選手として活躍している方がインタビューで答えていました。

俺よりうまい奴は、高校時代にいくらでもいた。