「ありがとう」と同じような言い方ですけど、よりかしこまった言い方なのが「かたじけない」かもしれません。
平安時代にはすでに使われていた言い方なのですけど、「ありがとう」よりも、目上の方に対する言い方というニュアンスが感じられます。
「かたじけない」には以下の3つの意味が含まれているそうです。
①恐縮する気持ち。相手に迷惑をかけたり、相手の厚意を受けたりして申し訳なく思うことやそのさま。
②感謝の気持ち。身に受けた恩恵などに対して、感謝の念でいっぱいであるさま。
③羞恥の気持ち。我が身を恥ずかしく思うこと。面目ないという気持ち。
ちなみに、「かたじけない」は丁寧な言葉ではありますが敬語ではないので、使う時は敬語の形にする必要があります。
「かたじけなく存じます」とか「かたじけないことでございます」とかですね。
西行法師が、はじめて伊勢神宮に参拝した時に詠んだ句があります。
「なにごとがおわしますかは知らねども、かたじけなさに涙こぼるる」
どなたがいらっしゃるのかは分からないけれど、ただありがたくて涙が出てくる。
そういうありがたさを感じながら生きる。自分で生きているのではなくて、生かされていることを知ること。
無意識は言語のように構造化されていると言ったのはジャック・ラカンですけど、日本人の無意識には、美しい言葉がたくさん収められているような気がします。