マーベル映画『マダム・ウェブ』が酷評されてしまったダコタ・ジョンソンですけど、数年前に『サスペリア』がリメイクされた時に(彼女が主演しています)祖母とプレミアに出席している写真を見て、ああ、そういうことかと思ったのです。
彼女の祖母はティッピ・ヘドレン、ヒッチコックの『鳥』に主演した女優さんです。ということは母親はメラニー・グリフィスで、父親は『マイアミ・バイス』のドン・ジョンソン。なんとなく面影を感じるのはドン・ジョンソンかもしれない。
メンデルの実験から始まった遺伝学は、その後DNAの解析が可能になり、どうして親子が似るのか、あるいは似ないのかについて説明できるようになりました。
この分野というのは本当に数多くの研究がなされているのですけど、言ってみれば人間を形作るのは「遺伝」なのか「環境」なのかについてさまざまな角度から検証されてきたのです。
ダコタ・ジョンソンが女優という職業を選んだのは、遺伝なのか、それとも環境なのか。そういうことですね。たぶん両方ではないかと思うのですけど…現在の研究では、遺伝が60パーセント、環境が40パーセントくらいなのではないかと見積もられているそうです。
メンタル疾患についても、遺伝と環境というのは複合的なものだという結果が出ているのですけど、2024年2月13日に東京慈恵会医科大学・ウイルス学講座の小林伸行准教授と近藤一博教授らの研究グループが、いわゆるDNAを介したものではない遺伝メカニズムを発表したのです。
前提として、うつ病の遺伝というのは、うつ病そのものが遺伝するわけではないということです。ただ、精神の安定をもたらすセロトニンという脳内物質の分泌を調節しているセロトニントランスポーター遺伝子は遺伝するのですね。ですから、親子や兄弟など二親等以内の血縁者にうつ病の方がいる場合、いない方と比較して発症率は2~3倍高くなるといわれていました。
ところが、東京慈恵会医科大学の発表で、それとは別の遺伝の可能性が発見されたのです。
うつ病の原因となるとされているヒトヘルペスウイルス 6(HHV-6)の SITH-1遺伝子には、うつ病を引き起しやすいタイプとうつ病を起こしにくいタイプが存在し、これが「うつ病になりやすい体質」やその遺伝に関与する。今回の発見を要約するとそうなります。
帯状疱疹という病気がありますけど、水疱瘡のウィルスが体内に残存していて、何らかの理由で免疫力が落ちてしまうと、ウィルスが再活性化してしまうことが原因になるのですね。
うつ病にも同じメカニズムが存在するということです。
①ヒトヘルペスウィルス6(HHV-6 )は新生児期に主に母親から感染し、その後一生涯ウイルス感染が持続する。
②ヒトヘルペスウィルス6(HHV-6 )には、うつ病を引き起こしやすいSITH-1遺伝子タイプとうつ病を引き起こしにくいSITH-1遺伝子タイプがある。
③うつ病患者の 67.9%が、うつ病を引き起こしやすい SITH-1遺伝子タイプを持っている。
④影響力を示すオッズ比は 5.28 で、うつ病を引き起こしやすい SITH-1遺伝子タイプを持ったHHV-6 に感染している方は、そうでない方に比べて約5倍うつ病になりやすい。
ですから、自身のDNAではなく、感染しているヒトヘルペスウィルスの型によって、うつ病になりやすいかどうかが決まっているということになります。もちろんそれだけが原因ではないですけどね。
そうなると、いかにしてウィルスを再活性化させないかということを、うつ病予防のために考えなければいけないということになります。
「免疫力を下げてしまうような生活」をしないこと。一言で言うとそうなると思うのですけど、暴飲暴食をしないとか、睡眠不足にならないようにする。ちゃんとバランスの取れた食事をする、適度な運動をするなど、今まで体調管理のために、こうした方がいいですよと言われてきた内容が、そのままうつ病予防になるということです。
今までうつ病の遺伝率については分からないことが多かったのですけど、この発見で大きく前進していくといいですね。