『常連のお客さま』

サロンのテラスに毎日お客さまがやって来るのですけど、そのことに気づいたのは3月のはじめでした。もしかすると、それ以前からもいらっしゃっていたのかもしれませんけど…気づいてからは、ほぼ毎日通ってきていると思います。

特徴的な模様があったので、すぐに分かったのですけど…キジバトという鳥でした。

エサをあげている訳でもないのに、なぜ毎日やって来るのかは謎なのですけど、時には2羽で来ていることもあって、なんだか雰囲気で伝わってくるのですけど…夫婦のような気がするのですね。

いつもはガーデン・チェアとかテーブルにとまっているのが、2羽の時はテラスの床でリラックスしていたりしますから、そういう時はテラスには人間の方を出禁にする他ないですね。邪魔しちゃ申し訳ないような気がしますから。

キジバト夫婦が何を思ってサロンに来るのかは分からないですけど…仮説としては、ちょっと休憩するための場所として利用しているのではないかと思うのです。代官山にも結構鳥がいて、ウグイスが鳴いていることもありますからね。エサの争奪戦のようなことはあると思うのです。カラスもいるし、ちょっと図々しいドバトもいる。なんだかさらっと横からエサをかすめ取るスズメだっていますしね。

そういう生きるための戦いに疲れてくると、うちのサロンのテラスで休む。キジバトさんたちにとってはいいことに、ちょっとした植え込みの陰になっていて、他の鳥からは見えにくいですし、私たちも何もアクションしませんから(窓から、今日も来たねぇと言い合っているだけです)居心地もいいのでしょう。

中目黒に降りていく坂の途中には、野良猫が時々散歩していますけど、ここらにはそれもいないですしね。

Wikipediaによると、キジバトはつがいで行動することが多いようで(私の勘が当たっていました)夫婦円満とか、家庭円満のシンボルと考えられているそうです。古代ギリシャでは、アフロディーテの使いとされていたそうで、キジバトの意味は「愛と美」だそうですよ。

何だか楽しくなってきたので、いろいろとキジバトのことを調べてみたのですけど、庭やテラスにキジバトが訪れるということは、概ねポジティブな意味と考えられているようです。よかったなぁ…。

そうそう、キジバトのことを調べていて、すごいことを知ったのです。

「ぽっ ぽっ ぽっ ハトぽっぽ 豆がほしいか、そらやるぞ みんなで仲よく食べに来い」

この歌は誰でも知っていると思うのですけど、このみんなで仲良く食べにくるハトはドバトなのですね。そして、ドバトは「クルックゥー」と鳴きます。「ぽっ ぽっ ぽっ」と鳴くのはキジバトなのです。キジバトは単独か2羽で行動しますから、みんなでは食べに来ないのです。つまり、キジバトの声で鳴くドバトが、この歌では設定されてしまっているのです。

民俗学者の柳田国男も『山バトと家バト』で、その間違いを指摘しています。

街中でよく群れて人に依存しているドバトといっしょにされ、その上声が「ぽっぽっぽ」ではキジバトの声の哀しさ、寂しさ、切なさなど感じられないかもしれない。もはや西行の歌う孤高の鳩ではなくなってしまった。そしてのんびりした声としか思わない人も出てきた。しかしそれは現在でも、キジバトの声に対する感じ方の一面にすぎない。少なくとも詩歌にとってのキジバトは今に至るまでずっと寂しかった。

そうか、詩歌の世界では、キジバトは寂しい鳥なのか。

テラスに住んでもいいよ。そう言ってあげたくなりました。