『「喪の仕事」④』

それはそうなのだけど…確かにチャーリー・パーカーのバードというニックネームは、ヤードバード(ニワトリのことです)を好んで食べていたことが由来だし、それくらい確実に致死率100パーセントで人は死ぬものかもしれないけれどね。

だけど、今回の問題の本質は、あなたがあまりも早く消えてしまったことにある。

倍音の一人として、私は声を大にしてそう言いたいのですけど、きっと耳のいい彼女にはその声が届いているでしょう。

「サヨナラを言うのは、少しずつ死ぬことだ」

フィリップ・マーロウはそう言いましたけど、彼女はサヨナラを言う間もなくいってしまった。そのことが問題なのですよね。

彼女が残していったこと。やり残した仕事のいくつかを、私は少しずつ片付けようとしています。

倍音同士がサロンやカフェで会い、消えてしまった基音のことをあ~だこ~だと語る数日を過ごし、少しずつ彼女を弔う準備が整ってきた気がしています。

この仕事を、彼女だったらいったいどう片付けたのか?

不在の基音の残した「問い」に答えながら、きっと彼女の存在しない世界を受け入れていくのでしょうね。

倍音が存在するという、この世界の仕組みは…残酷な世界の中にある、何よりも「やさしい」仕組みのように思うのです。