私事ですけど、親しかった友人が亡くなりました。
突然のことだったので、フロイトの言う…親しい者を亡くしたら発動する「喪の仕事」の1番目「混乱する時期」の真っ只中にいるような感じなのですけど、それでも仕事はある訳ですし、日中は変わらず暑い。『ルックバック』の主人公が置かれてしまったような状況に、自分も今はあるのだと思うと、誰か大切な方を弔うことになるという経験は、これはまぁ俯瞰してみたら日常で頻繁に起こりうることなのですよね。
とはいえ、やはり辛いものですよね。ほんの数日前に会って、麻布十番の彼女の友人の店に食事に行く話や、10月に行われるちょっとしたイベントの企画について、話し合ったばかりでしたから。
彼女は歌手でしたし、ボイス・トレーナーでもありました。新人の歌手をプロデュースする仕事もしていたのですけど…私は彼女の歌声が大好きだったのですよね。
経験せずに一生を送れるのであれば、それが望ましいことなのだけど、運悪く経験してしまった悲劇。だけど、その悲劇を経た者しかきっと出すことのできない…そういう種類の声。
これからきっとフロイトの言うとおりに、どういう形であれ「怒りの感情が出てくる時期」そして「気分がひどく落ち込む時期」を超えて、彼女が不在の世界で生きていくことを受け入れていくのでしょうけどね。結果として、誰かを亡くした世界というのは、その誰かが存在した世界とは別物なのです。
見慣れない国の空港の出口で途方にくれるような、そういう気分で、いまだ私は立ち尽くしているのです。