『ルックバック』の主人公は、ラストで大きな喪失を味わうことになります。
主人公の女の子(小学4年生から20代前半までが描かれます)は漫画を描いているのですけど、背景を担当している少女との友情話…一言で映画をまとめると、そうなると思います。
引きこもりで、人間が怖い少女を、主人公の女の子が引っ張り回す。そういう印象の描写が続きますし、どうも主人公の女の子の方は、引きこもりの子に対して支配的というか、あなたは私に着いてくれば全部うまくいくのよ…なんて発言もするのですね。
だけど、彼女を失った後、主人公の女の子は気づくのです。
カントが言う、他者を自分の手段として利用するような関わり方をしてきたはずなのに、そうではなかった。もしかしたら、そもそもの最初から、私は彼女のありのままをあらしめていたのかもしれない。
そして、彼女をありのまま見ることによって、私は私として存在することができるようになったのかもしれない。
漫画を、と言うよりも絵を描くことを愛し、絵が上手くなることを願い、そのために短い人生のほとんどを使ってきた彼女を認めていたのは、他ならぬ自分だったのかもしれない。そして、そのことによって自分は自分になることができた。
主人公の女の子が流す涙の理由は、たとえ本人がそれに気づいていなかったとしても、それが理由だと思うのです。