『シンゴの旅ゆけば~!(101)ダライ・ラマに会いにいく③』

夕方になって、めちゃくちゃ冷え込んできたので、そこらの露天で毛布を買い(ヤクという毛の長い牛みたいな動物の毛でできている)身体にぐるぐる巻きにして、ホテルを探し続けた。結局見つかったのだけど、町外れというよりも、町じゃないよなってくらい殺風景な山の中に建っている古いアパートみたいなホテルで、前にも書いたけど、シャワーが出なかった。まぁ、この時期はそもそも水の少ないダラムサーラーだから、どこに行ってもシャワーなんて超贅沢ということになっていたそうだけど。

ホテルを経営している兄弟はいい連中で、雨が降ると…シンゴ、シャワータイムだって俺を呼びにくる。シャンプーやら石鹸やらを持って屋上に上がり、5度くらいしかない気温の中で雨シャワーで身体を洗った。あんまり状況がひどくなると、人間ってもう笑うしかないって気持ちになるみたいで、ヤバい、このままシャンプーの泡まみれで死ぬかもとか考えると、ゲラゲラ笑ってしまう。

インド人2人と、日本人1人が、雨の中全裸でゲラゲラ笑っているのって、ちょっとした見ものだったろうけどね。

それでまぁ、仏教講座の日まで、特別することもないのでダラダラしていたのだけど、ダライ・ラマ法王の説法はチベット語で行うので、チベット語が分からない人は、各自ラジオを用意してください。英語やヒンディーに同時通訳した説法が聞けますという張り紙が亡命政府の入り口や、町のあちこちに貼られて…そうか、ラジオを手に入れないといけないなということになった。

あちこち電気屋さんとか、ちょっとした雑貨屋みたいなところを訪ね歩いたのけど、それはまぁ、ないよね。早々に諦めて、せめて雰囲気だけでもってことでいいかと思っていたら…ホテルの兄弟が、うちのラジオ使えばいいじゃんって声をかけてくれた。

なんてありがたい。黙っていると殺し屋にしか見えない兄貴の方が、この時ばかりは天使に見えた。