『シンゴの旅ゆけば~!(99)ダライ・ラマに会いにいく①』

世の中には凄い人ってのがいるって言われている。本当かどうかは分からない。だって俺はそんな凄い人に会ったことがないから。そうだったのよね。

まぁ、シャーマン連中で、男は胸、女は肩にデカい傷を負っている奴らがいて、どうもシャーマンになる修行の最後に胸なり、肩なりに穴を開けられて、フックで3日3晩木に吊るされる儀式をクリアした証らしいのだけど(サンダンスって言うらしい)確かにそういう連中は凄い。

でも、そういう凄さじゃないんだよね、俺がいつか会ってみたいなぁと思っているのは。

なんて言うのか、ああ、この人は凄い人なんだな、俺とは違うんだなってのを、会っただけでビビビと納得させられてしまうような凄さを持った人と言うのかな。

でもね、旅の途中でとうとう会ってしまったのだ。確かにこの人は凄い。逆立ちしたって絶対に勝てないって人間なんだけどさ。

ダライ・ラマの話を書くね。

3月初頭のチベット正月に、ダライ・ラマ法王の仏教講座というのが受けられると聞いたのはデリーだったのだけど、案の定ダラムサーラーっていうチベット亡命政府が置かれている町に行くバスは混みまくっていた。

なんとか予約が取れて、乗せてもらったのだけど、どうもバスを降りてからジープに乗り換えなければいけないらしい。長い道中になりそうだなぁと思っていたら、やっぱりそうなった。

ジープに詰め込まれて、山道を登っていくのだけど…途中で道路が壊れてしまっているところが多くて、ヤバいなぁと思っていたら、じゃ、そういうことでとドライバーが地元の言葉で何かを言う。俺以外の乗客は慣れたもので、さっさとジープを降り、みんなで車を押しはじめた。ああ、そういうことね。

それでまぁ、ジープから降りちゃ押す、しばらく進んでまた降りて押すってことを繰り返して、やっとダラムサーラーに着いた時は、立派な高山病にかかっていた。