『シンゴの旅ゆけば~!(98)ハワイ島の不思議な石⑤』

そりゃつまり…オバケってこと?

まぁ、そういう言い方もできるな。驚くことはないぞ。ローカルの人もよく出くわす。

あっさりとよくあることと言われたら、ああそうですかとしか言いようがないのだけど、オバケにしてはやけにリアルだったのよ。確か足もあったしね。

そりゃそうと、この時整体をしていた駐車場に、いつの間にか中国人観光客が並び始めていた。なんで並んでいるのだろうと思っていたら、フリーのマッサージでしょ。次は私ねと言われて…どうしてそういうことになるのだ。並んでもしね~よと言ったら散っていった。

整体が終わって、おいシンゴちょっと待ってろと言って、達人は自分の車に戻っていった。

ほら、これをお礼にあげるよ。ずいぶん楽にしてもらったからな。そう言って手渡されたのは真っ黒い石だった。

ちょっと薄っぺらい卵のような形の石で(サイズはダチョウとかの大きな卵だったけどね。)どうやら自然石を磨いたものらしい。マッサージで使うものだそうだ。

だって、ハワイ島の石なんて持って帰ったらヤバいでしょと訊くと、これは俺があげるのだから大丈夫だ。ハワイ島のものじゃなくて、俺のものだからと…赤い布に包んで渡してくれた。

これがね、不思議な石で、それからの旅には必ずお守りがわりに持っていったのだけど、肌寒いような気候の土地でも、この石はいつもほんわりと温かいのよね。どこか石の芯の部分に太陽の熱が固まっているように感じるのだ。

まぁ、それまでも旅先でトラブルに巻き込まれたことは殆どないのだけど(サイパン島で車上荒らしにあったことくらいなのよね。)その先も何もなかった。素直に石のおかげだなと思っている。話は脱線するけど、そのサイパン島の車上荒らしにあった時、レンタカー会社に戻って事情を説明すると…受付のおばさんが、まずはバナナを出し、ちょっとするとピザのデリバリーが届いた。

困ったことが起こったら、誰だって多少なりともパニックになっているものなのよ。そういう時は、とにかく食べること。話はそれからよ。おばさんはそう言って笑った。確かにそうかもしれない。トラブったら食べる。覚えておいた方がいい。

今その石は友達が持っている。ちょっとまぁ身体も弱いし、いろいろと問題のある男だから俺より奴が持っている方がいいと思ったのだ。

ネイティブ・アメリカンの教えなのだけど、もらった物はいつまでも持っているんじゃなくて、次の人に渡せって言われているしね。