7歳の時に事故で1度死んだそうなのだけど(心肺停止ってやつだね。)その時のことは何も覚えていない。天使も来なかったし、川の向こうにいる親戚が、こっちに来ちゃダメだとかも言われなかっ
だけど、この時の俺は、死ぬのってこういうことなのかって分かったのだ。死んでいるのだから、身体のどこかが痛いとか、そういうことは何もない。とにかく身体が楽だ。そのうえ頭もすっきりしていて、今ならジェイムズ・ジョイスの本だってスラスラ読めてしまえそうだった
ああ、そうか。どこかで死んでしまっていて、野晒しにされているわけね。仰向けで死んでいて、目を開けているんだろうな。そう思った。死んでいるのだから動けない。だから、見えている空が変わらないのだろうと推理した。次に考えたのは、ここはどこだってことだ。前世の記憶とか、そういうことなんだったら、どこか現実の場所のはずだからね。
厚い雲が重なっていて、昼間なのに空はぼんやりとしている。じっと空を見上げていたら、すうっと煙が流れていく。さっきから煙臭いのは、これが原因だな。何を焼いているのだろう?
きっとヨーロッパのどこかだな。ふとそう思った。あんまり南の方じゃない。きっと北欧とか中欧とか、そのあたりだな。なぜそう思ったのかは分からないけれど、事実のような気がした。
死んでいるのって、特にすることもないし、まぁできないのだけど、こんなに落ち着いた気分になるものなのねと思っていたら、仲間の誰かに揺さぶられて起こされた。