『夢を見るかもしれない⑤』

キルトン・スチュアートの『マラヤの夢理論』で世界的に知られることになったマレーシアの少数民族がいます。セノイ族と呼ばれている彼らは、夢をコントロールする技術を持っていることで知られているのですけど、ちょっと興味があっていろいろ本を読んでみたのですね。

自身も悪夢に悩まされていたライターの大泉実成さんが、セノイ族と暮らすことで悪夢から解放されたというルポは感動的でもあったのですけど(『夢を操る マレー・セノイ族に会いに行く』という本です。)そのことに興味を持たれたゲゲゲの鬼太郎の水木しげる先生が、大泉さんとセノイ族に会いに行くという続編があるそうで、こちらも読むのが楽しみなのです。

すでに若い世代のセノイ族では失われつつあるそうですけど…ほんのちょっと前までは、昨夜見た夢を家族で話し合うということが、朝食の席で必ず行われていたそうです。

基本的にどんな夢の話をしても「ああ、それは素晴らしい夢を見た」と父親や年長者が肯定してくれる。そこから夢の話は始まります。

仮に悪夢を見たとしても、その悪夢に出てくる…例えば虎とか、怖い動物ですけど、夢を見ているあなたは戦わなければいけない。夢の中で友人を作って、その友人に加勢してもらうこともできるけど、友人が駆けつけるまでは一人で戦わなければならない。セノイ族にはそういう教えがあるのです。

そして勝ったら、その相手から何かをもらうこと。それもセノイ族の教えです。もし負けてしまって夢の中で自分が死んでしまったとしても、それで相手は力を使い果たしている。だから次は勝てるに違いない。そう考えるのですね。

もう1つの教えは、性的な夢でも、それ以外の夢でもそうですけど、快楽を追求すること。たとえ社会的には禁じられているような相手との性関係についての夢を見ても、どんどん先へ進みなさいと言うのです。

夢に出てくる誰かとは、結局のところあなたの分身なのだから、自分自身を統合して人格を成長させることになるからと言うのが理由なのですけど、その夢から分析を始めるであろうフロイトやユングとは違って、セノイ族の教えは、夢をどう生きるかというノウハウなのですね。

よ~し、次に夢の中で怖い思いをしたら…戦おう。私もそう決めました。