『夢を見るかもしれない①』

レイモンド・チャンドラーの未完の遺稿を、ロバート・B・パーカーが加筆した『プードル・スプリングス物語』が出た時は驚きましたけど、パーカーはもう1作フィリップ・マーロウものを書いています。こちらは完全に彼のオリジナルです。『夢を見るかもしれない』(『Perchance to Dream』)という日本語のタイトルがとても気に入っていて、時々歌のように口ずさむことがあるくらいです。

私は、今夜、夢を見るかもしれない。

多くの方が勘違いをされているのですけど「私は夢を見ない」と仰っている方でも、ちゃんと夢は見ているのです。個人差があるのは「夢を見る能力」ではなく「夢を思い出す能力」の方なのですね。

1953年のことです。シカゴ大学の大学院生ユジン・アセリンスキーは、睡眠について研究しているクリットマン博士の指導のもとに、新生児の睡眠のパターンを調べていました。そこで眠っている赤ん坊の眼球が急速に動くことを発見したのですね。後に「Rapid Eye Movement」と呼ばれるようになる現象です。これを「R.E.M」日本だとレム睡眠と呼びますけど、その状態の時に人は夢を見ているのです。

アセリンスキーとクリットマンは、大人にも同じ眼球運動が生じるかを調べ、その時に夢を見ていることを突き止めました。だいたいレム睡眠は就寝中に4~5回。時間にして90分ほどの間私たちは夢を見ているようなのですね。

この発見で、夢の研究は一気に表舞台に出ることになります。ところがですね…悪夢を見ることで悩んでいる方に計測機械を付けて眠ってもらうと、ほとんど悪夢を見ません。男性の無精についての研究でも、計測機械を付けて調べられると、ほぼ無精を引き起こすような夢を見ないのです。

つまり、どうも見る夢というのは、環境に左右されているようなのです。