『A long time ago in a galaxy far, far away…』

『スターウォーズ』のオープニングに浮かび上がる文字を、覚えているでしょうか?

「A long time ago in a galaxy far, far away…」(遠い昔、はるかかなたの銀河系で…)という言葉はデフォルトで、その後に、これまでの物語のアウトラインが語られます。画面の奥の宇宙に向かって消えていく文字列を見ていると、お、『スターウォーズ』が始まったなという気持ちにさせてくれるのですね。

私は、そんなに遠くない昔、カリフォルニア州モデストで…起こった話を書きたいと思います。

『スターウォーズ』を作ったジョージ・ルーカスは、1944年にカリフォルニア州モデストで生まれます。父親はジョージ・ルーカス・シニアです。オフィス家具の会社を経営していました。

この父親というのが厳しい方で、息子のジョージは「欲しいものがあったら、自分で手に入れろ」という父親の教育方針に従って、4歳の時から手伝いをして貯めたお小遣いで、欲しいものを買っていたそうです。

息子のジョージは、唯一の男の子だったので、映画を作る道に進みたいと言った時も「おまえは、家の仕事を継ぐために生まれてきた。映画なんて絶対に失敗するに決まっている」と言って猛反対されたそう。

それで、ジョージ・ルーカスは、家出するような形でハリウッドにやってくるのですね。

『スターウォーズ』が大成功して、その続編も作られ、ジョージ・ルーカスは成功者になりました。自分のスタジオを持ち、大勢のスタッフを使うようにもなりました。

ところが、どうもこの頃からジョージ・ルーカスは嫌な奴になってきたそうなのですね。スタッフをしかりつける、時には怒鳴ったりもする。自分の言うことを聞かないスタッフを解雇してしまう。まるで独裁者のようになってしまっていました。

そんな彼に話をしたのが、親友のスティーブン・スピルバーグ。2人は一緒に『インディ・ジョーンズ』シリーズを作っています。

ジョージ・ルーカスの子供時代を知っていたスピルバーグは、親友にこう言います。

今のあなたは、あれほど嫌っていた、お父さんそっくりになっていると思うよ。

『スターウォーズ』は、父子の葛藤の物語です。最大の悪だと思っていたダース・ベイダーが、自分の父親だと知って苦しむルーク・スカイウォーカー。

最後に親子は和解するのですけど…どうもダース・ベイダーのモデルはジョージ・ルーカスのお父さんのようです。ベイダーが長身(188センチ)なのは、お父さんが2メートル近い身長だったからだとか。そもそもDarth Vader (ダース・ベイダー)のVaderは、オランダ語で「父親」という意味ですしね。

スピルバーグの忠告を受け入れたルーカスは、疎遠になっていた父のところへ向かいます。呼吸器系の病気を患っていた父と、和解することができたルーカスは『スターウォーズ』シリーズを続ける心理学的な動機を失ったのかもしれません。『スターウォーズ』の権利を、ディズニーに売却しましたから。

心の奥にあった、父親へのコンプレックス。それを作品に昇華させたのが『スターウォーズ』です。ところが、『スターウォーズ』の中で親子が和解したとしても、現実の方はそうはいかなかったのです。自分の中の認めたくない自分、見たくない自分は、まるで父親のような暴君にジョージ・ルーカスをしてしまった。もちろん本当にジョージ・ルーカスの父親が暴君だったかどうかは分かりません。あくまでも、ジョージ・ルーカスの心の中では、そういうことになってしまっていたということです。

友人の忠告を受けて、現実の父親とも和解したジョージ・ルーカス。

その後はどうなったかと言いますと…。

スピルバーグの紹介で知り合った、メロディ・ホブソンと2013年に結婚。ジョージ・ルーカスは69歳でパパになりました。娘さんの名前はエベレストちゃん。

まるで、おとぎ話のような結末です。

それにしても、「持つべきものは友」ですよね。スピルバーグに足を向けて眠れないような…。