作家の金井美恵子さんが、小津安二郎の映画を見ていると、原節子の爪がやけに光るのが気になって集中できないと書いていました。
『秋日和』の原節子が、パール系のマニキュアをしているのを異様に感じるということなのですけどね。そう言われて見てみると、確かに地味な格子柄の着物を着た原節子なのに、爪だけは光っている。
こういうことって、ありませんか?
『エクソシスト』という怖い映画がありますけど、主人公の少女のお腹に「help me」という文字が浮き上がるシーンがあります。ところが、私が忘れられないのは、そのシーンの少し前。
壁に赤い文字で書かれた「TASUKETE!」という日本語が出てくるのです。
これは、私の記憶の癖なのかもしれないですね。昔見た映画を思い出すと…ストーリーにも何の関係もない、むしろどうでもいいようなシーンだけ覚えていることが多いですから。
スーパーヒーローものの『ジャスティス・リーグ』という映画があって、死んでしまったスーパーマンが復活するのですけどね。私が覚えているのは、光よりも早く動ける能力を持っているフラッシュが、バットマンに「あなたはどんな能力があるの?」と尋ねるシーン。
バットマンって、スーパーマンみたいに空も飛べないし、ワンダーウーマンのように出自がそもそも人間ではない…なんてことはないのです。ただの人間なのですけど、秘密兵器をたくさん開発して戦っている。ですから、フラッシュの問いかけは、だってあんたは普通の人間じゃないかという、揶揄する気持ちが含まれているわけです。
それに対してバットマンの答えは「金持ちだ」なのですね。
金持ちが能力のヒーロー。
でもね、このシーンを見たとき、私はつくづく素晴らしいと思ってしまったのです。
これが私の能力ですなんて、胸を張って何かを語れる人なんて、きっと一握り。だけど、バットマンのようにただの人間であったとしても、そして金持ちではなかったとしても、言えることが一つだけあるのです。
それは「私は運がいい」ということ。
あの人は運がいいよなって、そう感じる人って、あなたの周りにもいると思います。そして、運がいいと思われる人って、自分でも「私は運がいい」と思っていると思うのですね。
イギリスでこういう実験がありました。
まず、あなたは自分を運がいいと思うか、それとも運が悪いと思うか質問をします。
それから、新聞を配って、こう言います。
この新聞に、何枚の写真が使われているか数えてほしい。
ところが、この新聞には仕掛けがあって、新聞をめくってすぐの紙面に答えが書いてあるのです。
自分を運がいいと思っている人たちは、運が悪いと思っている人たちに比べて3倍の正解率だったそうですよ。
これはどういうことかと言うと、運がいいと思っている人というのは、心理学的に言うと「外向性」と「開放性」が高い人だということが分かっています。
自分の内面に目が向きやすい人を「内向性」が高いといいます。その逆で、他人の動きや周りのことをよく見ている人が「外向性」の高い人です。
また未知のこと、新しい物事が起きた時に動揺することなく、むしろ楽しいと思えるのが「開放性」の高い人です。
とは言え、考えてみてください。あなたがこの世界に存在するということは、そもそも母親の卵子に、父親の精子が受精したということ。
1つの卵子にたどり着くために、約3億の精子が競争をします。ですから、あなたがあなたになった確率は3億分の1です。もし、あなたの元になる精子が卵子にたどり着きそこなったら…あなたは違う性別に生まれていたかもしれない。
つまり、この世に存在しているだけで、誰でも運がいいのです。
あなたは、あなたであるだけで運がいい。そういうことなのです。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジャック・スパロウを演じたジョニー・デップは、彼の身体の動きをローリングストーンズのキース・リチャーズを参考にしたそうです。
その縁で、ジャック・スパロウの父親役(キャプテン・ティーグ)をキースが演じることになるのですけど…撮影場所にやってこない。
やっと来たかと思ったら、まともに歩けないくらい酔っていたそうです。
だから、彼の出て来るシーンは、ほとんど上半身のアップだけです。両足をスタッフが支えていたそうです。
そこで、キースが言ったこと。
ディズニーがシラフの奴をほしいなら、他をあたれ!
キース・リチャーズは、キース・リチャーズであるだけで運がいいような…。