ああ、これが手ですね。こちら側に足が見えます。心臓が動いているのが見えますか?
お子さんがいらっしゃる方であれば、産婦人科のエコー検査で、こういうやりとりをしたことがあると思います。
ああ、折れていますね。
整形外科で、レントゲン写真を見ながら、こう言われたことがある方もいるでしょう。
だけど、心って見えないのです。レントゲンも撮れないし、CTだって使えない。
だから、イメージを使うしかありません。いわゆる比喩というやつですね。
自分の前にあるテーブルに水のいっぱい入ったコップが置いてあるとイメージしてみてください。
そのコップの左側は過去です。
右側は未来ですね。
過去の思い出、反省、後悔に気持ちが動くと、そのコップは左に傾きます。そして、傾けばコップの水はこぼれちゃいますよね。
反対に、未来の心配ばかりしていると、コップは右に傾いて、やっぱり水はこぼれます。
自分らしく生きている、自分の軸が通っている。そう感じている時、コップはまっすぐに立っています。つまり今現在に意識を置いているわけですね。
もう一つ、イメージしてみてください。
コップに水が入っている。そこから半分飲んでしまいます。
もう半分なくなったと感じることもできますし、まだまだ半分あるやと感じることもできます。
現象は同じ。どう感じるかはあなたに委ねられている。
フレデリック・ラングブリッジの『不滅の詩』の一節を聞いたことがある方もいるかもしれません。『ジョジョの奇妙な冒険』というマンガで引用されていましたからね。
Two men look out through the same bars.
One sees the mud, and one the stars.
二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。
一人は泥を見た。もう一人は星を見た。
私はこの詩が好きです。
いつも星を見ていたい、そう思っています。
カウンセラーとして一番嬉しいのは、泥ばかり見ていたクライアントさんが、星を見上げることができるようになること。
僕が天を仰ぐのは、くしゃみをしたいときだけさ。
ツルゲーネフはそう言いましたが、そう言えたなら、きっとカウンセリングを終了しても大丈夫かもね。
撮影カメラマン 松原充久