『緑の光線』

夏の夕焼けが好きです。

濃いブルーの空が、薄いブルーに変わり、頰を赤らめた女の子のようにピンクに染まっていく。

こんな美しいグラデーションを見ていると、小さなこだわりなんて手放してみようと思ったりしませんか?

エリック・ロメールの映画に『緑の光線』というのがあるのですけど、真夏の南仏で時々見ることのできる、太陽が沈む瞬間に、一瞬だけ放たれる「緑の光線」をモチーフにした映画です。

気持ちのやさしい女性なのだけど、あまりにもこだわりが強すぎて(そのこだわりの強さは、恐怖心や不安感が作り出しているように見えます)恋人がなかなかできない、人間関係がうまくいかない。そういう主人公が、映画のラストで、きっとこれから恋人になるのだろうなと思わせる男性と、緑の光線を見るのです。

夕焼けを見ていると、こだわりを手放そうと思うのは、きっとこの映画の記憶ですね。

こだわり、つまり執着について。

執着心に苦しんでいらっしゃる方は、すごく多いのです。

執着とはもともと仏教用語で、「しゅうじゅく」と読むそうです。

物事に捉われてそこから離れられないという、心の状態を言います。仏教では、悩みや苦しみの原因は、執着からくると言われています。

執着心が強い人は、もともと生真面目な方が多く、独占欲やコンプレックスが加わって、悪い意味の執着に変わっていきます。

でも、良い意味で捉えれば、物事にこだわりを持つということなので、同じ執着心でも、努力するため、継続するための必要な力として使うこともできるのです。

感情は、コインの裏表みたいなものだということですね。

私は◯◯に執着してしまっているという悩みがある。

そして、執着している自分に執着している自分がいる。執着し続けることで得をしている自分がいる。

執着を手放す方法って、実は悩みを終わらせたいっていう気持ちだけなのです。

◯◯に対する執着を手放すのではなく、執着している自分に執着している自分を手放す。

話はややこしいですけど、結局のところ人間って悩みたいものなのです。悩むことで得すること。それを捨ててしまえばいいのです。